プログラミング教育に対する現場教職員の意識変化について
~プログラミング出前授業実施後の感想~
2018年3月20日
CSAJプログラミング教育委員会では、昨年秋に現場教職員を対象に、情報教育に関するアンケートを実施、2017年12月にアンケート結果を公表しました。
アンケートによると、学校現場において、日常的にICT機器を活用している先生は多いものの、2020年からプログラミング教育が必修化するにあたって、まだまだICT機器やネットワーク環境が不足していること、さらに機材以外でも多くの先生が、教育委員会からの支援や研修時間など、多数の課題を感じているといった結果でした。
また、プログラミング教育に関する想いとして自由に記入いただいたコメントの中でも、必修化にあたって、多くの先生が何らかの課題や不安を抱えている印象でした。
出前授業による先生方の意識変化
さて、CSAJプログラミング教育委員会のメンバーでもあるさくらインターネット株式会社では、CSR活動の一環で、平成29年度よりプログラミング教育の出前授業を実施しています。
そこで、出前授業を見学・体験した後の教職員を対象に、アンケートを実施したところ、「情報教育に関するアンケート」実施時期と比較して、先生方の考え方が、「不安」から「自分にもできそう」といった、前向きな思考に変わった様子が確認できましたので、参考資料の一つとして、ご紹介させていただきます。
本アンケートの公開にご協力いただきました地域ならびにさくらインターネット株式会社様には御礼申し上げます。
アンケート実施概要
回答対象:出前授業を見学・体験した小学校の教職員
アンケート回答校:12校(※)
回答者数:64名
アンケート実施企業:さくらインターネット株式会社
※本アンケート実施校は、今秋プログラミング教育委員会で実施した「情報教育に関するアンケート」にも、ご協力いただいた地域が含まれています。
出前授業見学後のアンケート結果
Q1.出前授業を見学したり、打ち合わせに参加することによってプログラミング教育について知らなかったことを知ることができましたか?
Q2.プログラミング教育についてどの程度知りたいと思いますか?
Q3.出前授業で行った内容は自分にもできると思いますか?
Q4.Q3で「難しいと思う」と答えた先生に伺います。どんなところが難しいと考えましたか?
- 自分自身がコードモンキーを使ってみなければ(知らなくては)教えられないと思いました。もっといろいろなプログラミング学習のネタを知り、児童の実態から選択できるといいなと思いました。
- 授業するためには、しっかりと理解した上でしなければいけないと思った。現状ではその余裕がない
- 思い通りにPCが動かなった時の対処法がわからない。
- 知識や技術がなく不安(戸惑う)という一言につきます。今回の授業は、わかりやすく楽しかったです。一緒にやってみて"なるほど"と思いました。
- プログラムされたデータを元に授業はできると思いますが、実際にそれを(1から)作るのは不可能かなと思いました。
- 専門的な知識が必要かな、と感じました。
Q5.出前授業の内容について、「自分ならこうしたい」というアイデアが浮かびましたか?
Q6.「アイデアが浮かんだ」と答えた先生に伺います。具体的にどんなアイデアが浮かびましたか。
キーボードの操作について
- パソコンのソフトにローマ字変換ゲームがあるので、それを子どもにやらせたらおもしろいかなと思って見ていました。
アンプラグド教材のアイデア
- ブラックボックスを用いた授業(指令カード入れると別の物(名前)が出てくる ※関数の学習)
- 身近なモノにコンピュータを入れてみよう!何にコンピュータが入っていたら、楽しい?うれしい?便利?という子供たちに思考させる内容
信号機の動作を体で表現する活動について
- 内容というより、児童へのなげかけ方や流しについてです。例えば、児童と教師の役割を入れ替えるなど
コードモンキーの取り組み方へのご意見
- 最初に自由に試した後、説明をするというやり方もあるな、と思いました。
- (1)「TURN」の文字が先に出ることを伝える(2)先に「TURN」「RIGHT」「LEFT」「STRAIGHT」など利用する英単語を教えておく。
Ichigo Jamの取り組み方へのご意見
- プログラミング言語 "RUN""LOAD"などを知りたい、使いたい、というニーズに対応できる資料があるといいな、どこかの場面で与えられるといいな…と感じました(高学年向け)
全体のカリキュラムに対する構想
-
はじめに、プログラミングとはどういうものなのか、「はなれたところにある荷物をとるまでの動き」を、考えさせるなどのことを導入で行い、順序立てて考えて大切さを味わう。
⇒その後、パソコン作業⇒何のためにプログラミングを学習するのかについて学ぶ。単なるゲーム、プログラマーを育てるものではない、ということ、ここに触れるとより良い授業になると思います。
Q7.他にも見てみたい出前授業のメニューはありますか?
Q8.出前授業全般について、自由にご意見をお聞かせください。(抜粋)
- コンピュータは苦手でなかなかうまく指導できていませんでしたが、わかりやすく楽しんで学習するいろいろな方法があるのだとわかり、想像よりも簡単そうだったので、機会があれば自分でもやってみたいと感じました。
- 初めてプログラミング学習をしてみて、児童が主体的にトライ&エラーを恐れず、楽しみながらくり返していく姿は、すばらしいと感じました
- コンピュータ制御で動く⇒仕組みがある程度わかる、想像する、つかむにつなげること、本質をつかませることの難しさを感じました。
- 論理的思考力の育成とつなぎ方が難しいと感じました。発達段階に応じた指導をセレクトしながらスモールステップで育めるような統計立てたカリキュラムが必要になりますね。
- これらの授業を通して、その先にどのような子どもの姿をイメージするのかが共有されないと、一つ一つの時間の指導が浅くなると思いました。
- 子どもたちは、とても楽しそうに参加していました。ローマ字を学習した後に行うと、もう少しスムーズに授業がすすむと思います。
- 学校の教員だけでなく、地域の方も関わっていただいて、連携しながら子どもを育てていくというスタイルは、とてもいいことだと思います。子どもたち、とても楽しそうでした。ありがとうございました。
- 特別支援学級でも先を見通す力、ゴールに向かって一つの指示・作業を適切に行う力など、プログラミングの授業は実りあるものとなった。
- 出前授業はちらっと見させていただいただけでしたが、「プログラミング」という言葉が少し身近でハードルが下ったように感じました。間違いから、あれこれ策を学ばせる過程もプログラミングの良さだなと思います。今後も勉強していきます。ありがとうございました!
- 子どもたちはもちろん、教員にもたいへんよい経験なりました。ありがとうございました。
- 子どもたちも大変興味を持って取り組んでいました。インターネットとの付き合い方、マナーなどについても大変参考になりました。
- 子どもの方が頭やわらかく吸収力があるのでどんどんプログラミング教育をさせてあげたいです。一方教師としては、目標や位置づけ(評価や時数 ETC)、育成したい能力がはっきりしていないと、担任の好き嫌で取り扱いが大きく変わってしまうので、それは学校教育としていかがなものかと思います。
- 平成32年の指導要領全面改定に向けて、プログラミング教育だけではなく、新しいこと、大きく変わることがたくさんあります。学校教育全体の姿を見通して、教えていきたと思いました。ありがとうございました。
- 短時間でしたが、 PC に実際触れ試行錯誤する経験を子どもたちができたこと、試しながら進める、考えてから操作する、どちらの方法も"正解"という視点が子どもの中にできたことが良かったです。
- 初めての授業でしたが、プログラミングとは何か…という段階というから、実際にプログラミングする段階までステップアップできたので、とても勉強になりました。ありがとうございました。
参考1:出前授業を実施したメニュー内容
No | タイトル | プログラミング的思考のポイント | 対象 | PC利用 | 学習の狙い |
---|---|---|---|---|---|
1 | 身の回りにあるコンピュータを探そう | コンピュータへの興味・関心 | 全学年 | 無 | 自分の身の回りにあるコンピュータで制御された物がたくさんあることに気づき、それらがどう利用されているのかを知る |
2 | ルビィの服を作ろう | パターン | 全学年 | 無 | 情報の中にあるパターンを見つけ、パターンに基づいてルビィの服を自分なりに表現できる |
3 | ペンギンからのお手紙 | データ構造 | 全学年 | 無 | 友達と協力しながらデータ構造を把握し、同じ構造のデータを利用して手紙を書くことができる |
4 | ロボットのお仕事 | シーケンス | 全学年 | 無 | 身近な動作を細かい命令に分け、それを順に並べて意図した動作を表現できる。 |
5 | プログラミング体験1(Code Monckey) | シーケンス プログラミングの基礎知識 |
中学年以上 | 有 | コードを記述し、正しくプログラミングができた時に意図した通りに画面上のキャラクターが動くことを体験する。 |
6 | プログラミング体験2(Ichigo Jam) | シーケンス プログラミングの基礎知識 |
中学年以上 | 有 | コードを記述し、正しくプログラミングができた時に意図した通りにLEDを光らせることができることを体験する |
7 | 相談の上決定 | - | - | - | 各授業メニューの説明や、先生のご希望をお聞きするなどし、授業内容を一緒に考察する。 |
参考2:出前授業を実施した各メニューのコマ数
メニュー内容 | コマ数 |
---|---|
プログラミング体験1(Code Monckey) | 16 |
ペンギンからのお手紙 | 5 |
身の回りにあるコンピュータを探そう | 5 |
ルビィの服を作ろう | 3 |
その他 | 2 |
プログラミング体験2(IchigoJam) | 1 |
ロボットのお仕事 | 1 |
プログラミング教育に対する現場教職員の意識変化について
本件に関する問い合わせ先
一般社団法人コンピュータソフトウェア協会
事務局 担当:若生
TEL:03-3560-8440/E-mail:gyoumu1@csaj.jp