平成29年 CSAJ会長年頭挨拶
第4次産業革命を牽引する
IoT、ビッグデータ及び人工知能(AI)技術と
働き方改革の一層の推進に向けて
一般社団法人コンピュータソフトウェア協会 会長
荻原 紀男
新年あけましておめでとうございます。皆様には、平素より協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。平成29年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。
昨年、世界は事前の世論調査を覆し、6月に国民投票で英国のEU離脱が決まり、11月に実施された米国大統領選挙でも共和党のトランプ氏が当選するなど波乱の年でした。日本経済も、120円台であった円ドルレートが一時100円を割り込むなど輸出産業を中心に業績の下振れが懸念され、それに伴い日経平均株価も年末こそ1万9千円台に戻しましたが一時1万5千円を割り込むなど大きく乱高下しました。
しかしながら、我が国では政府が6月に『日本再興戦略2016』を閣議決定し、2020年名目GDP600兆円の達成に向け、第4次産業革命や働き方改革などを掲げ、サービス業の生産性向上のためのIT導入を促進する補正予算、研究開発税制の拡充(サービス開発の追加)、IT・セキュリティ人材育成の強化などアベノミクスを着実に推進し、当協会及び会員企業にとって追い風となった年でした。
また、7月には当協会を含め53のIT団体を束ねた『一般社団法人 日本IT団体連盟(IT連盟)』が設立されました。今後、IT連盟とは政策、IT人材育成およびIT教育など密接に連携し、会員企業への利益の最大化及び今後一層の会員数の拡大を図っていきたいと考えています。
第4次産業革命に関しては、それを牽引するIoT(Internet of Things)、ビッグデータ、及び人工知能(AI)というキーワードがあらゆるメディアに取り上げられましたが、これらの中核技術はロボット、センサーなどのモノ、ネットワーク、ソフトウェアです。特にソフトウェアに関しては、セキュリティ分野を含め高度なIT人材の育成が急務であり、その意味で当協会の役割及び実施している各種事業・活動は今後ますます重要になると考えます。
例えばCEATEC JAPAN 2016 では、メインテーマをIoTにシフトし、IoTタウンを始め、展示内容を大幅に見直しました。その結果、出展企業数及び来場者数ともに前年比でかなり盛り返すことが出来ました。技術委員会においても人工知能(AI)技術研究会やIoT推進研究会を発足させ、その主催する関連セミナーも好評でした。また、セキュリティ分野の人材育成についても、政府への要望書の提出など関係府省への積極的な働きかけの結果、今年から『教育訓練給付金(専門実践型)』の助成対象講座にセキュリティを含むIT分野の講座の拡充が認められる方向となりました。
働き方改革については、それに関する好事例が多数記載されている『コンピュータソフトウェア業 高齢者雇用推進ガイドライン』を9月に作成し、当協会ホームページで公開するとともに、各地で開催するセミナーを通じて会員企業への普及にも努めました。今年は当協会内に新たに検討組織を設置して、テレワークの導入推進、高齢者も含めた柔軟な再雇用制度、スキルの『見える化』、副業・兼業の自由化など働き方改革についても幅広く検討することとしています。
人材育成分野では、次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストを実施するとともに、革新的なソフトウェアを開発する起業家を育てるスタートアップ支援事業などを通じて、我が国におけるプログラミング人材の育成に貢献していきます。また、2020年から小学校においてプログラミング教育の必修化が決定され、当協会でも9月にプログラミング教育委員会を設置し、業界として行えるサポート体制などを検討しています。
さらに、PSQ認証制度の普及・定着、会員企業のビジネスチャンス拡大、海外市場の新規開拓、プライバシーマーク審査事業、iCD(iコンピテンシ ディクショナリ)の利活用の推進など幅広い活動を引き続き展開してまいります。
まず、PSQ認証制度はクラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の品質について第三者が適合性評価を行うものであり、現在33製品が認証を受けております。この仕組みによって、ソフトウェア製品の購入者は、安心してソフトウェア製品の選定ができますし、ベンダーにとっては、利用者や販売代理店などに対して、自社のソフトウェア製品が国際基準に準拠した品質であることを国内外の市場にアピールできますので、今後とも一層の普及・定着に努めます。
会員企業のビジネスチャンス拡大については、昨年末で120回を迎えたアライアンスビジネス交流会を核として、優れた技術や製品・サービスをもつ有望なベンチャー企業の育成・支援を目的にビジネスマッチングの推進に努めてまいります。
海外市場の新規開拓支援については、中国、台湾、インド等のアジア圏におけるソフトウェア市場に関する研究活動及び展示会への共同出展や今年3月にドイツで開催されるCeBIT(国際情報通信技術見本市)への出展などを通じて会員企業の海外市場開拓を支援していきます。
また、当協会は、平成19年度に一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマーク指定審査機関として指定を受けて以来、昨年末までに更新及び新規を合わせて審査実績は約660件ですが、今後とも本審査事業の一層の拡大を目指して個人情報保護の推進に寄与して参りたいと考えております。
2020年名目GDP600兆円を実現する鍵は、第4次産業革命を牽引するIoTなどの中核技術及びこれらを支えるセキュリティ対策並びに働き方改革に対して、政府及びIT業界一丸となって取り組むことと考えます。そのためIT連盟を始めとする他のIT関係団体と連携し、ITの重要性を政府の政策に反映させるための各種の政策提言や国の審議会などでの発言を積極的に展開するとともに、今後とも当協会の各種事業・活動を着実に推進していきたいと考えています。
最後になりましたが、当協会は、経済産業省、総務省、厚生労働省、文部科学省等の政府機関と共に、日本のソフトウェア産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援及びご協力をよろしくお願い申し上げて新年のごあいさつとさせて頂きます。