平成28年 CSAJ会長年頭挨拶
品質の高いソフトウェア製品の供給を通じて
安全・安心な社会の構築と新たな経済成長を実現
一般社団法人コンピュータソフトウェア協会 会長
荻原 紀男
新年あけましておめでとうございます。平成28年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。
皆様には、平素より協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。本年もなお一層のご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
昨年は、政府から「GDP600兆円」「出生率1.8」「介護離職ゼロ」という新三本の矢が発表され、アベノミクスも第2ステージに入りました。
IT業界においては、昨年10月に経済産業省と総務省の強力なバックアップによってIoT推進コンソーシアムが設立され、我が国がIoT(Internet of Things)時代に向けて大きく舵を切った年となりました。
IoT時代には、ビッグデータや人工知能等の技術の進歩によって、産業・社会構造が大きく変革する可能性があります。センサー等から収集される膨大なデータを活用した新たなサービスが生まれる一方、既存ビジネスも急激な変化を要求されることでしょう。
IoT時代の中心は言うまでもなくソフトウェアです。インターネットに接続されるさまざまな機器に組み込まれるソフトウェア、データを収集し送信するソフトウェア、収集されたビッグデータを分析するためのソフトウェア、得られた情報を経営等に活かすためのソフトウェア、情報セキュリティを強化するためのソフトウェアなどがIoT時代のビジネスの正否を握ることになるでしょう。
当協会では、このIoT時代を担う優秀な若者を発掘するためU-22プログラミング・コンテストを実施するとともに、世界を変える革新的なソフトウェアを生み出すベンチャー企業を育てるスタートアップ支援事業を始めました。また、この活動に合わせて、初等中等教育におけるプログラミング教育の推進にも寄与していきたいと考えています。
さらに、ますます深刻化するIT人材不足を解消するため、昨年11月に設立した「アジア等IT人材定着支援協議会」の活動を通じ、アジアを中心とした海外の優秀なIT人材が活躍できる場を提供し、日本への定着を促進するための活動を展開していきます。
こうした新しい活動に加えて、従来から実施しているPSQ認証制度の普及・定着、モバイル関連の新技術の研究、クラウドビジネスの課題解決、会員企業のビジネスチャンス拡大、IT人材の発掘と活用・育成、海外市場の新規開拓など、幅広い活動を展開してまいります。
まず、平成25年度にスタートしたPSQ認証制度ですが、この制度は、クラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の品質について第三者が適合性評価を行うものです。この仕組みによって、ソフトウェア製品の購入者は、購入前にPSQマークなどの情報によって安心して選定ができ、また、信頼性の高い製品を利用できるようになります。ベンダーにとっては、利用者や販売代理店などに対して、自社のソフトウェア製品が一定の品質基準を満たしていることをアピールすることができます。また、国際標準に準拠しているため、海外市場開拓にも役立つと期待しています。引き続きこのPSQ認証制度の普及・定着に尽力したいと思います。
モバイル関連の新技術の研究については、スマートフォンの急速な普及やタブレットなどのモバイル機器の多様化によって、マルチデバイス、マルチネットワークを前提としたアプリケーションが増えつつあります。こうした現状を踏まえ、モバイル技術の最新動向に関する研究会やセミナーを引き続き実施してまいります。
クラウドビジネスの課題解決については、クラウドサービスのプロフィットモデル、エコ・システムの構築、サービスの信頼性・安定性の向上などの問題について、研究会活動の中でユーザー・ベンダー双方の立場から検討を推進してまいります。
会員企業のビジネスチャンス拡大については、110回以上の開催実績を誇るアライアンスビジネス交流会を核として、優れた技術や製品・サービスをもつ有望なベンチャー企業の発掘を行うとともに、ベンチャー企業の育成等を目的に、ビジネスマッチングの推進に努めてまいります。
IT人材の発掘と活用・育成については、ITパスポート試験の普及促進、iCD(iコンピテンシ・ディクショナリ)の利活用の推進などを通じ、人材育成に貢献してまいります。また、IoT時代のサイバーセキュリティ強化に不可欠な情報セキュリティ人材の育成にも力を入れていきたいと思います。
海外市場の新規開拓支援については、中国に加え、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、インド等のアジア圏におけるソフトウェア市場に関する研究活動や展示会への共同出展などを通じて会員企業の海外市場開拓を支援していく予定です。
また、当協会は、平成19年度に一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマーク指定審査機関として指定を受けており ますが、そのプライバシーマーク審査事業の一層の拡大を目指して個人情報保護の推進に寄与して参りたいと考えております。
当協会は、経済産業省、総務省、厚生労働省、文部科学省等の政府機関と共に、日本のソフトウェア産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えております。
特に、本年は、日本が抱えるさまざまな問題を打開し、日本経済の持続的な成長を実現していく鍵は、より一層のITの利活用にあるという信念に基づき、数多くある他のIT団体と連携し、ITの重要性を政策に反映させ、飛躍的成長のために必要不可欠な施策を実現するための活動を展開していきたいと考えていますので、引き続き皆様のご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。