「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理(案)に対する意見を提出
2018年12月18日
2018年11月5日から2018年12月4日までの期間、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課より公示されました「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理(案)に対する意見公募について、当協会では法務・知財委員会を中心に以下の通り意見をとりまとめ、2018年12月4日に、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課へ意見を提出しました。
提出意見
■意見1
・該当箇所
全体
・意見内容
透明性及び公平性の確保
「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」(以下「検討会」という)についての情報公開、事業者・業界団体の参画を求める。平成30年7月10日に検討会が設置されて以降、中間論点整理(案)が公表されるまで、非公表で審議が進められてきた。中間論点整理(案)に掲げられている各論点は、事業者・業界団体にとって非常に影響の大きな問題であることから、後述する各論の意見を踏まえ、継続して事業者・業界団体を含めた関係者の参画の元、社会経済への影響(産業育成、投資促進、中小企業への影響、日本の競争力の向上)などの幅広く、かつ、中長期的な観点から議論を行っていただきたい。
・理由
(意見内容と同じ)
■意見2
・該当箇所
2.デジタル・プラットフォーマーに対する法的評価の視点
(p.3)「デジタル・プラットフォーマーには、様々な業態や類型のものが含まれ、必ずしも確立した定義はない。」
・意見内容
対象とするデジタル・プラットフォーマーを一括りにせず、その業態や類型等により分類し、分類毎に分けて議論を進めることが重要であると考える。その場合、特に今までの起業支援の政策と齟齬のないものとしていただきたい。
・理由
基幹プラットフォームを提供する巨大デジタル・プラットフォーマーから、巨大デジタル・プラットフォーマーが提供する基幹プラットフォーム上でマイクロサービスを提供する小規模プラットフォーマーまで一括りに規制や規制緩和を論じると、日本市場でのデジタル・プラットフォーマー間の競争構図の実態を見逃すことになりかねず、その結果、起業家やニュービジネスが悪影響を受けることになるため、きめ細かな議論が必要と考える。
■意見3
・該当箇所
2.デジタル・プラットフォーマーに対する法的評価の視点
(p.6)「マッチング型プラットフォーム・ビジネスか非マッチング型プラットフォーム・ビジネスか、収益構造その他のビジネスモデルがどのようなものであるか、プラットフォーム利用者間の取引がB2CかC2Cか等の観点」とあるが、技術的には以下の3タイプに分かれ、このサービスモデルによって、議論を分けることも有用と考える。」
・意見内容
この分類に、以下のクラウドビジネスの一般的な3分類を追加してはどうか。
1)単純なデータセンターとしての利用(いわゆるIaaS)
2)コンテンツ基盤としての利用(いわゆるPaaS)
3)SNSや音楽ダウンロードサイトなど、ソフトウエアそのものの利用(いわゆるSaaS)
・理由
PaaSやSaaSベースの利用は、ユニークな機能が多く、ベンダーロックインされやすく、移植はかなり難しいのが現状。IaaSは移植性はあるものの、PaaSやSaaSなどのサービスとの組み合わせ利用が広まりつつあり、結果ベンダーロックインされつつある。
■意見4
・該当箇所
3.イノベーションの担い手として負うべき責任の設計(業法の在り方等)
(p.7)「そこで、我が国におけるプラットフォーム・ビジネスの適切な発展を促進するため、各領域において守るべき具体的な社会的利益・価値(消費者保護・救済手段の確保、安全・衛生確保、公正競争確保等)に立ち返りつつ、特に以下の観点を考慮して、このような業法の見直しの要否を個別に検討していくことが必要ではないか」
・意見内容
この提言には大いに賛同できる。産業分野別(公共、金融、流通、製造、等々)に具体的なサービス例を列挙し、認証や監査など、共通性の高いテーマを洗い出し、法規制の可能性を議論する場を設定してはどうか。
・理由
産業分野別のとりまとめだけでは、縦割りでの検討にしかならず、横断での検討では、議論が拡散しかねないので、産業分野別に議論を進め、共通性の高い部分を浮き彫りにしていくと、整理が早いと考える。
■意見5
・該当箇所
4.公正性確保のための透明性の実現(1)透明性及び公正性実現の必要性
(p.8)「現に、巨大デジタル・プラットフォーマーと事業者との間の取引慣行上の問題の存在が指摘されている。」
・意見内容
我が国でもデジタル・プラットフォーマーの育成は不可欠であり、そのため国内プラットフォーマーの育成として、データセンター設置に係る補助や電気代の低減などが考えられる。
・理由
国策的に、我が国のデジタル・プラットフォーマーの育成は不可欠であり、中小企業やスタートアップなどによるイノベーションの支援のための環境整備が必要ではないか。
■意見6
・該当箇所
4.公正性確保のための透明性の実現(2)透明性及び公正性を実現するための取組の在り方
(p.10)「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引慣行について、透明性及び公正性を実現するための議論の出発点として、関係者を対象に、大規模かつ包括的な徹底した調査を行うべきではないか。
前記(1)のとおり、秘密保持契約等を理由に調査対象の事業者から情報提供を断られるなど、強制力を伴わない調査には限界が伴うことも想定されるため、調査を実施するにあたって、必要に応じて、独占禁止法40条の一般調査権(強制調査権限)も活用してはどうか。」
・意見内容
独占禁止法40条の一般調査権(強制調査権限)は、恣意的なものであってはならず、その必要性については十分な説明責任が求められ、法律に基づく行政権の執行、透明性・公平性ある対応を行っていただきたい。「プラットフォーム」の概念は広範であるため、公正取引委員会は調査の範囲を明確に示す必要がある。特に大規模かつ広範な調査は、中小企業やスタートアップに多大なコストをかけてしまうこともあり、例えば、マーケットシェアの上位1-20位あたりまでとするなどの配慮をお願いしたい。
・理由
一般調査権は罰則で担保されている強制調査権であることから、調査の目的が恣意的であってはならず、その必要性については十分な説明責任が求められる。
■意見7
・該当箇所
4.公正性確保のための透明性の実現(2)透明性及び公正性を実現するための取組の在り方
(p.11)「規律の内容、手段及び対象となるデジタル・プラットフォーマーの範囲については、ビジネスの変化の速さ、負担の大きさ、知的財産権、営業秘密やノウハウへの配慮等も考慮して、インカメラ手続き等も含めて、検討すべきではないか。
技術やビジネスの変化の速さにも対応できる柔軟な枠組みという観点から、ルールの内容や、自主規制と法規制を組み合わせた柔軟な手法である共同規制を含めたルールの在り方等について検討すべきではないか。」
・意見内容
各事業者において、それぞれのビジネスモデルに応じたユーザーの個人情報保護の仕組み、データの利活用に関するルールの公表などの取り組みをしており、規制の検討に当たっては、自主的な取り組みや産業界における取り組みの成果を十分に考慮すべきである。また、小規模プラットフォーマーも含めた国内のデジタル・プラットフォーム事業の適切な成長を促すことも念頭においた仕組みづくりが重要である。
・理由
効果的な規制枠組みの検討に当たっては、各事業者や産業界による自主的な取り組みの成果を十分に踏まえる必要があると考える。また、技術やビジネスの変化の速さに鑑みると、小規模プラットフォーマーが急激に成長し、生活に不可欠な存在となることも想定される。
■意見8
・該当箇所
5.公正かつ自由な競争の再定義
(p.13)「デジタル・プラットフォーマーに対して事業者と同様に事業活動上、経済的価値を有していると考えられるデータを提供し続けている消費者との関係では、優越的地位の濫用規制を適用することを考える必要もあるのではないか。」
・意見内容
「消費者との関係で優越的地位の濫用規制を適用」するケースとは、具体的にどのようなケースを想定しているか。
・理由
消費者は、自己のデータを提供することで始めてプラットフォーム・サービスの利益を享受できるため、取引内容次第で一概に優越的な地位を濫用しているといえないケースも多いと推察する。また、消費者取引については、消費者契約法等で一定の規制がされていることに鑑みると、ビジネスを安心して行うため、更に優越的地位の濫用規制を設ける必要のある具体的なケースを明示いただきたい。
■意見9
・該当箇所
6.データの移転・開放ルールの検討
(p.14)「欧州で認められている情報の自己コントロール権のように、個人のデータの管理やアクセスに係る権利を認めることの意義について、検討してはどうか。」
・意見内容
Society5.0を国民の信頼の上に実現するため、個人のデータの管理やアクセスに係る権利を検討することは重要である。ただし、事業者にとってはシステム設計変更等が必要になるため、時期・規模等については慎重な議論が必要である。特に中小企業やスタートアップにとっては、多大な業務負担・投資が必要となることもあり、結果として大規模プラットフォーマーのみが残ることにならないよう配慮をお願いしたい。
・理由
我が国の個人情報の定義を欧州GDPRと合わせるのか、という議論とも関わるが、日本の個人情報保護法を元に設計された既存のシステムを、欧州のデータポータビリティに対応したシステムに変更するには、相当のシステム設計変更が必要となり、小規模プラットフォーマーには重いコスト負担となることに留意の上、時期及び社会的な必要性・受容性含め、十分に議論をつくすことが必要である。
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