レポート:スマート農業最前線センシング技術の可能性~持続可能なこれからの農業に向けて~
2022年1月28日
私たちの最も身近な「食」を支える農業は、生産者の高齢化・労働力不足・環境変化など、さまざまな問題を抱え、安心・安全な「国産」の供給が脅かされており、持続可能な農業のためにはICTの利用は不可欠になってきています。
今回は、これまでの農業ICT研究会の活動を踏まえ、スマート農業を実施するにあたり、作物の状態を観察する「センシング」が人的負荷の軽減と、作物をより良い環境で生育するための要件を整え、スマート農業に非常に有用であると考え、「センシング技術」をテーマに開催いたしました。
はじめに、フードロス削減を支援する技術として、エチレンガスのモニタリングによる貯蔵・輸送の最適化センサーについて、産業技術総合研究所の洪 達超様にご講演いただきました。
続いて、日本は「量産」よりも「高品質」のほうが普及しやすい土壌があるとして、「美味しい」作物をつくるためのAIを活用した新しいセンサー技術について、産業技術総合研究所の古川祐光様にご講演いただきました。
そして最後に、農業をはじめ、様々なセンサーを取り扱い、活用している株式会社セネコムより、薬用ニンジンの植物工場栽培を可能にした、クラウド×センサーの事例をはじめ、様々なセンサー活用事例についてご紹介いただきました。
3セッションとも、異なる技術でセンサーを活用し、食材の生育・管理・測定・流通などに役立つ「スマート農業」と今後の可能性についてお話いただき、聴講者からはいろいろなセンサーがあることに感動した、現在の糖度計は、甘さと酸っぱさが同じ結果になってしまう、という事実が衝撃だった、と内容に感銘を受けた方も多かったようです。
農業ICT研究会では、これからの「農業」の在り方とICTの活用をテーマに、持続可能な農業について研究・情報発信していく予定です。
概要
日時 | 2022年 1月18日(火) 15:00~16:30 |
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会場 | オンライン開催 |
対象 | SAJ会員・JAISA会員限定 |
参加費 | 無料 |
参加 | 18社24名 |
プログラム
時間 | 内容 |
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15:00~15:05 | 開催挨拶 主査:中村 憲司(株式会社大和コンピューター 代表取締役社長) |
15:05~15:30 |
触媒式エチレンセンサの開発とスマート農業への展開 植物の成熟ホルモンの1種であるエチレンガスは、青果物の代謝の過程で発生し、青果物の品質を左右する。洪氏のチームでは従来とは異なる方式でエチレンガスを高選択的かつ高感度にセンシングする技術に取り組んでいる。当日は、本開発のエチレンセンサの技術詳細、及びエチレンセンサを利用した青果物の鮮度品質管理によるフードロスの削減やスマート農業への展開の可能性について紹介いただいた。 |
15:30~16:00 |
農業をAI化するために必要な育成センサー
現在のスマート農業は、気象条件の悪いオランダで生産性を挙げるように発展しているが、小規模農家の多い日本では大量生産で対抗するのは得策ではない。日本が目指すのは、和食文化に育まれてきた高品質素材を支えるスマート農業でなくてはならない。フルーツトマトや味の良いイチゴなど、高くても売れる農作物を作る技術を開発するため、古川氏らチームの考えるAI農業について紹介いただいた。 |
16:00~16:30 |
クラウド型センシングによる薬用植物栽培(薬用ニンジン)及びセンサーネットワークに関して 薬用植物の生産は露地栽培が主流であったが、センサーを用いたリモートセンシング技術を使うことで、室内栽培での安定生産や促成栽培が可能となった。これら株式会社セネコム社が取り組んできた各種センシング技術を紹介いただいた。 |
講師略歴
講師略歴 |
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洪 達超 (こう たっちょう)氏 2014年大阪大学で博士(工学)を授与、アメリカUC Berkeley及び筑波大学での博士研究員を経て、2016年11月に産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センターに入所し、エネルギーや環境分野に貢献する触媒開発やクリーンな反応開発に従事。2019年に触媒を利用したセンシング技術の開発にも取り組む。 |
古川 祐光(ふるかわ ひろみつ)氏 1997年大阪大学で博士(工学)を授与。理化学研究所でのポスドクや(独)医薬品医療機器総合機構で医療機器審査専門員を経て、産業技術総合研究所で光学・レーザー医療機器に関する研究開発に従事。フィールド機器の開発を得意とし、2019年から現職のセンシングシステム研究センターでは、農業・海洋・鉱山・インフラなど広域モニタリング技術に取り組んでいる。 |
齋藤 和興(さいとう かずおき)氏 世界各国の陸・海・空で使用する各種センサーを取扱い、更に弊社開発センサーによるセンシング技術を基に、大学、試験研究機関とのIOTによる共同研究に取り組む。 |
セミナーの様子
セミナーアーカイブ(会員限定・一部のみ)
本セミナーのうち、株式会社セネコム様のご講演について、アーカイブ配信に掲載しております。
セミナー資料は全講演分ダウンロードいただけます。
以下URLよりご確認ください。
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一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)
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