ニューヨークだより 2019年8月
「eスポーツの現状」
2019年9月11日
省庁・団体名
JETRO/IPA NewYork
内容
2019年7月末にニューヨークで開催されたバトルロワイヤル系eスポーツの人気タイトル「フォートナイト(Fortnite)」の世界大会(Fortnite World Cup 2019)で優勝した16歳の少年が獲得した賞金は300万ドル(約3億円)である。
北米・西欧地域、中国、韓国を中心に急成長を遂げているeスポーツ市場は、Newzoo社によれば、世界全体で、2018年に9億ドル(約900億円)、2021年には16億ドル(約1,600億円)に成長すると見込まれる(PRTIMES社によれば、日本の市場は2018年に約50億円、2021年に約85億円)。また、地域(国)別では、世界のeスポーツ売上高の38%を北米地域が占め、世界最大規模の市場となっており、アジア地域でeスポーツの成長をリードする中国と韓国がそれぞれ18%、6%を占める。
eスポーツ市場を取り巻くビジネスエコシステムには、以下のステークホルダーが存在する。
- ゲーム開発・販売会社
- eスポーツ大会の企画・運営企業
- eスポーツ大会を配信するプラットフォームプロバイダ
- プロゲーマー/プロeスポーツチーム
- スポンサー企業
eスポーツがゲームか「スポーツ」かについては意見が分かれているが、国際オリンピック委員会が、近年、オリンピックの正式種目として採用する可能性を検討し始めたことで、その行方が注目されている。eスポーツは競争性が高くゲームプレイヤーに従来のスポーツ選手と同等の厳しいトレーニングが求められるため、一つのスポーツ活動としてみなされるとする考え方がある一方、暴力的な行為を扱うビデオゲームは、無差別、非暴力、平和を推進するオリンピックの価値観とは相容れないとの懸念があり、IOCはGlobal Association of International Sports Federationと協力しながらのさらなる検討が必要だと報告している。また、高額の賞金やeスポーツ選手の名声の高まりと共に、不正行為(チート)や八百長が問題となっている。
アメリカでは、eスポーツを推進する動きとして以下が見られる。
- 海外プロゲーマーに対するアスリートビザの発行
- プロゲーマー向けeスポーツ教育プログラムを提供する大学
- eスポーツ専用スタジアムの建設
日本では、2018年2月の「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」発足やeスポーツプロライセンスの発行開始を受けて、国内におけるeスポーツ関連報道の増加、各テレビ局によるeスポーツ関連番組の放送も開始、大手新聞社主催の学生向けeスポーツ選手権や、ゲーム会社主催のリーグ大会も開始されるなどの動きがある。KPMG Consulting社の先進テクノロジー部門シニアマネージャーを務めるHyun Baro氏は、コンシューマゲームが主流の日本では、競技性を伴うゲーム需要が比較的少なかったことや、法規制などにより大会の賞金額が低いこと、大手スポンサーの不在といった点がeスポーツの普及・発展を妨げている諸要因として挙げる一方、「eスポーツは成長性が高い反面、急速に発展した歴史の浅い産業であるため未知の課題も多く、きちんとガバナンスやコンプライアンスを確立していけば日本のeスポーツは全然遅くない」との見方を示している。
詳細
https://www.ipa.go.jp/files/000077285.pdf
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Kiyoshi Nakazawa (中沢潔)
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