ニューヨークだより 2018年9月
「ボストン(世界最大のライフサイエンス・バイオクラスター)」
2018年10月2日
省庁・団体名
JETRO/IPA NewYork
内容
ボストンのテクノロジーの中心地である「ケンドール・スクエア地区」は、「地球上で最も革新的な平方マイル(the most innovative square mile on the planet)」として知られ、現在、グローバル製薬会社トップ20社のうちの13社を含む多数の製薬・バイテクノロジー企業のほか、Facebook社、Google社、Twitter社、Amazon社、Microsoft社等の大手テクノロジー企業も拠点を構え、数十のスタートアップも活動している。
Global Startup Ecosystem Reportでは、ボストンは、スタートアップ・エコシステムとして、シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドン、北京に続く第5位にランクされ、特に強力なエコシステムが形成されている分野は(1)バイオテクノロジー、(2)AI・ビッグデータ解析、➂先端製造技術・ロボティクスの3分野とされている。
ボストンのバイオテクノロジーコミュニティは世界最大規模のクラスターであり、半径1.5キロメートル以内に大小問わず120社のバイオメディカル企業が集積、同地域にあるMITやハーバード大学、レズリー大学(Lesley University)を中心とする著名大学から優秀な人材を多数獲得できることに加え、多数の関連研究機関や企業を支援する投資家、特許弁護士の存在が同地域のバイオクラスター・エコシステムの発展を支えている。その中でも、(1)大学・研究機関及び大学附属病院、(2)バイオテクノロジー・スタートアップと大手グローバル製薬会社、(3)州政府(マサチューセッツ州ライフサイエンスセンター<MSLC>)の3つの要素が特に重要な役割を果たしていると考えられる。
こうしたクラスターに成長するまで、1980年前後のBiogen社とGenzyme社の設立を始め、MITやハーバード等の大学を中心とする研究者によってバイオテクノロジー・スタートアップが創設され、1990年代には企業と大学との共同研究が進み、1990年代後半以降、大手グローバル製薬会社が次々とケンブリッジ周辺に研究施設を置くようになったという経緯がある。また、Menino元ボストン市長(1993〜2014年)による「イノベーション地区」に産業クラスター形成を目指したイニシアチブや2008年のPatrick元マサチューセッツ州知事主導によるライフサイエンス法(中高における教育・人材から学術研究及び商用化・グローバル規模での事業育成支援まで、10年間で10億ドルを拠出)の施行が貢献したと考えられる。
Biogen社を創設したPhilip Sharp氏は、「今後20年間においてバイオテクノロジー業界で一つの鍵を握るのは薬剤を組み合わせたエンジニアリングであり、ボストンはこの取組みでリードしている。業界では、ビッグデータとバイオテクノロジーを組み合わせた情報処理に機械学習技術の果たす役割が今後ますます重要になり、同分野で最も優れた取組みを行っている都市が勝ち抜ける」と述べている 。
日本においても、ライフサイエンス・バイオ産業は将来大きな成長が見込める産業として期待されており、大阪、京都、神戸をはじめとする関西地方は、製薬会社や大学、研究機関、病院が集まる日本のバイオテクノロジーハブとして知られ、「関西健康・医療創生会議」等の構想の下、ライフサイエンス・バイオクラスターとしての成長に挑戦している。
(参考)グローバル・アクセラレーション・ハブ(JETRO)
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