雇用の分野で障害者に対する差別が禁止され、合理的な配慮の提供が義務となりました
2016年12月13日
省庁・団体名
厚生労働省
概要
「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、平成28年4月1日に施行されました。
内容
改正のポイント
- 雇用の分野での障害者差別の禁止
障害者であることを理由とした障害のない人との不当な差別的取扱いが禁止されています。 - 雇用の分野での合理的配慮の提供義務
障害者に対する合理的配慮の提供が義務付けられています。 - 相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助
障害者からの相談に対応する体制の整備が義務付けられています。
障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務とされています。
対象となる事業主の範囲は、
事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となります。
対象となる障害者は、
- 障害者手帳を持っている方に限定されません。
- 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方が対象となります。
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
1 雇用の分野での障害者差別の禁止
募集・採用、賃金、配置、昇進、教育訓練などの雇用に関するあらゆる局面で、
- 障害者であることを理由に障害者を排除すること
- 障害者に対してのみ不利な条件を設けること
- 障害のない人を優先すること
は障害者であることを理由とする差別に該当し、禁止されています。
募集・採用時の差別の例
- 単に「障害者だから」という理由で、求人への応募を認めないこと
- ※特例子会社を設置している親会社で求人募集を行う場合や、障害者のみを対象とする求人募集を行っている事業所において、別に求人募集を行う場合であっても、全ての求人において、障害者だからという理由で障害者の応募を受け付けないことは禁止される差別に該当します。
- 業務遂行上必要でない条件を付けて、障害者を排除すること
- ※障害者のみ一定の資格等を応募の要件とすることも禁止される差別に該当します。
採用後の差別の例
- 労働能力などを適正に評価することなく、単に「障害者だから」という理由で、異なる 取扱いをすること
- ※単に障害者であることを理由として、昇進の対象としない、特定の職務を割り当てる(割り当てない)、雇用形態を変更する、障害者のみを退職の勧奨対象とすることなどが禁止される差別に該当します。
禁止される差別に該当しない場合
- 積極的な差別是正措置として、障害者を有利に取り扱うこと
例 障害者のみを対象とする求人(いわゆる障害者専用求人) - 合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果として障害者でない人と異なる取扱いをすること
例 障害者でない労働者の能力が障害者である労働者に比べて優れている場合に、評価が優れている障害のない労働者を昇進させること - 合理的配慮に応じた措置をとること
(その結果として、障害者でない人と異なる取扱いとなること)
例 研修内容を理解できるよう、合理的配慮として障害者のみ独自メニューの研修をすること など
2 雇用の分野での合理的配慮の提供義務
合理的配慮とは、
- 募集及び採用時においては、障害者と障害者でない人との均等な機会を確保するための措置
- 採用後においては、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置のことをいいます。
障害の種類によっては、見た目だけではどのような支障があり、どのような配慮が必要なのかわからない場合があります。また、障害部位・等級が同じ場合であっても、障害者一人ひとりの状態や職場環境などによって、求められる配慮は異なり、多様で個別性が高いものである点に留意が必要です。
具体的にどのような措置をとるかについては、障害者と事業主とでよく話し合った上で決めていただく必要があります。
募集・採用時の合理的配慮のための手順
障害者から事業主に対して、支障となっている事情や必要な配慮を申し出ていただきます。申し出を受けた場合は、どのような合理的配慮を提供するかを当該障害者と事業主の間でよく話し合っていただくことが必要です。
採用後の合理的配慮のための手順
- 配慮を必要としている障害者の把握・確認
労働者本人からの申し出の有無に関わらず、事業主から障害者に対して、職場で支障となっている事情の有無を確認してください。全従業員への一斉メール送信、書類の配付、社内報等の画一的な手段により、合理的配慮の提供の申し出を呼びかけることが基本となります。 - 必要な配慮に関する話合い
障害者本人から、障害の状況や職場で支障となっている事項、配慮事項への意向を確認することが必要です。障害者本人の意向が十分に確認できない等の場合は、障害者の家族や支援機関の担当者等から、支障となっている事項やその対処方法についての意見を聞くことも有効です。 - 合理的配慮の確定
障害者の意向を十分に尊重しつつ、提供する合理的配慮を決め、障害者本人に伝えます。その際、障害者が希望する措置が過重な負担(※ P4)であり、より提供しやすい措置を講じることとした場合は、その理由を障害者本人に説明いただく必要があります。 - 職場内での意識啓発・説明
障害者が職場に適応し、有する能力を十分に発揮できるよう、一緒に働く上司や同僚に、障害の特性と配慮事項を理解してもらえるように職場内での意識啓発が必要です。
なお、説明に当たっては、障害者本人の意向を踏まえ、説明内容や説明する対象者の範囲等について、障害者本人と十分に打ち合わせしておくことが肝要です。
必要な配慮について話し合う際の参考例
どのような配慮が必要か話し合うに当たっては、障害特性や状況等を踏まえ、例えば次のような観点から進めることができます。
参考例
- 就業時間・休暇等の労働条件面での配慮が必要か
- 障害の種類や程度に応じた職場環境の改善や安全管理がなされているか
- 職務内容の配慮・工夫が必要か
- 職場における指導方法やコミュニケーション方法の工夫ができないか
- 相談員や専門家の配置または外部機関との連携方法はどうか
- 業務遂行のために必要な教育訓練は実施されているか など
合理的配慮の具体例
募集・採用時の合理的配慮の例
- 視覚障害がある方に対し、点字や音声などで採用試験を行うこと
- 聴覚・言語障害がある方に対し、筆談などで面接を行うこと
採用後の合理的配慮の例
- 肢体不自由がある方に対し、机の高さを調節することなど作業を可能にする工夫を行うこと
- 知的障害がある方に対し、図などを活用した業務マニュアルを作成したり、業務指示は内容を明確にしてひとつずつ行ったりするなど作業手順を分かりやすく示すこと
- 精神障害がある方などに対し、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
事業主が障害のある労働者に合理的配慮を提供する際に、参考となる事例を紹介しております。
過重な負担
合理的配慮は「過重な負担」にならない範囲で事業主に講じていただくものであり、合理的配慮の提供義務については、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合は除くこととしています。
過重な負担は、以下の6つの要素を総合的に勘案し、個別に判断します。
- 事業活動への影響の程度
- 実現困難度
- 費用負担の程度
- 企業の規模
- 企業の財務状況
- 公的支援の有無
3 相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助
相談体制の整備
事業主は、障害者からの相談に適切に対応するために、相談窓口の設置などの相談体制の整備が義務づけられています。
相談体制の整備その他の雇用管理上必要な措置
- 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
- 相談者のプライバシーを保護するために必要な措置をとること
- 相談したことを理由とする不利益な取扱いを禁止し、労働者にその周知・啓発をすること
(例 就業規則、社内報、パンフレット、社内ホームページなどで規定する)など
苦情の処理
事業主は、障害者に対する差別禁止や合理的配慮の提供に関する事項について、障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務とされています。
紛争解決の援助制度
障害のある労働者と事業主の話合いによる自主的な解決が難しい場合における紛争解決を援助する仕組みが整備されています。お困りの際は、都道府県労働局職業安定部にご相談ください。
- 都道府県労働局長による助言、指導または勧告
- 第三者による調停制度
担当
厚生労働省職業安定部雇用開発部障害雇用対策課