IoT時代(つながる世界)における安全・安心を確保する技術に関する実証実験を開始
2015年12月8日
省庁・団体名
独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)
概要
IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:藤江 一正)技術本部ソフトウェア高信頼化センターは、異なる分野の製品同士が相互に接続する「IoT (*1) 時代」において、製品の安全・安心を確保するための“開発指針”の策定に向けた実証実験を、IPA、一般社団法人日本ロボット工業会ORiN協議会(委員長:水川 真)、一般財団法人機械振興協会(会長:庄山 悦彦)の 3者共同により12月7日から2016年3月末まで実施します。
URL:http://www.ipa.go.jp/sec/info/20151202.html
内容
2020年までに世界のIoTデバイス数は500億を超えると予測(*2)されています。IPAは今後、さまざまなモノや製品が相互に接続するような「IoT時代」=「つながる世界(*3)」が到来し、新たな製品やサービスの創出、利便性が向上していくと期待しています。
一方、そのような「つながる世界」では、さまざまなモノや製品同士がつながることによって、利用者の安全・安心を脅かすような重大な事故やインシデントの発生が懸念(*4)されます。
IPAは、今後到来するIoT時代を踏まえ、つながることによって発生する事故やインシデントなどのリスクを未然に防ぐための技術対策により、安全・安心が確保された信頼できる製品を開発するための“開発指針”を策定することを目的とした検討ワーキンググループ(WG)(*5)を2015年8月に設置し、有識者による検討を進めています。
今回、策定中の開発指針の考え方や有効性の検証を目的に、製品の安全・安心を確保するための対策技術を実証するため、IPA、ORiN協議会、機械振興協会の3者共同により、12月7日からORiN(*6)上で実証実験を開始します。実験は2016年3月末までの予定です。
実証実験は、以下の役割分担で実施します。
- IPA : 実証実験の仕様決定、評価と報告書作成
- ORiN協議会 : 実証実験のためのORiNアプリケーションの作成
- 機械振興協会 : 実験環境の提供
実証実験の内容は、 以下の2つを予定しています。
- 障害の波及防止対策(製造ライン稼働時の異常検出と対策)
工場内の製造ラインを構成する装置から情報(ログなど)を収集し、異常を検知した場合に速やかに装置を安全に停止する仕組みなどを実装する。 - 相互接続時の信用確認(要求品質が異なる装置を接続する時の対策)
工場内の製造ラインの増設や新規に装置を追加する場合に、その装置が信頼できる装置であることを確認するために、装置が信頼できるかなどの「品質情報」をやり取りする仕組みを実装し、製造ラインに組込んで良いかの判断を行う。
今回の実験は、工場内において“つながる”場合を想定していますが、インターネットなどのネットワーク接続を通じて“つながる”場合、つまり今後の「IoT時代(つながる世界)」においても適用できる対策技術であると考えています。
また、今後IoT製品・機器を開発する企業にとって参考となることを目的に、今回の実験結果を2016年3月末に一般公開する予定です。
なお、本実験で得られた結果は、現在策定中の開発指針に反映し、その有効性を高めると同時に、内容の充実を図りたいと考えています。また、ORiN協議会ではORiNの次期バージョン仕様に反映していきます。
IPAは、これらの取り組みを通じて、今後、IoT機器の安全・安心を確保する対策技術が普及していくことを期待しています。
脚注
(*1) IoT(Internet of Things):様々なモノがインターネットに接続し、情報をやり取りしたり、制御を行ったりすること。
(*2) 米CISCO社公表資料(P.3「Figure 2. Internet Growth Is Occurring in Waves.」)より
(*3) IPAでは、自動車や家電などの異なる分野の製品がつながって新しいサービスを創出し、実システムから得られる大量のデータをサイバー空間で解析し、その結果を実システムに反映するデータ駆動型社会のことを「つながる世界」と定義している。
(*4) 例として、自動車とスマートデバイスが相互につながることで、スマートデバイスからの遠隔操作を可能とする技術が実現したと仮定し、スマートデバイスが故障し動作停止した場合、自動車側に重大な事故が発生する可能性が懸念される。また、自動車側が外部から不正アクセスされた場合、スマートデバイスの情報が窃取されるなどのインシデントが発生する可能性が懸念される。
(*5) 「つながる世界の開発指針検討WG」:名古屋大学教授の高田 広章氏(WG主査)をはじめとする学術関係者に加え、ホームネットワーク(HEMS)、自動車部品、家電製品などの各産業界から13名の有識者が参加し、開発指針を検討している。
(*6) ORiN(Open Resource interface for the Network):オラインと読む。ORiNは、ORiN協議会により制定された工場情報システムのための標準ミドルウェア仕様として、製造現場の各種装置に対して、メーカーや製品の違いを超えて統一的なアクセス手段を提供するソフトウェア。現在「ORiN2 SDK」として実用化されており、パソコンのアプリケーションから、異なるメーカーのロボット、工作機械などの制御装置の情報を共通化された方法でアクセスできるため、ソフトウェア開発の工数削減やソフトウェアの再利用性、保守性の向上が期待されている。
(*7) PLC(Programmable Logic Controller):リレー回路の代替装置として開発された制御装置である。
(*8) NC(Numerical Control):動作を数値情報で指令する制御方式のこと。NC工作機械を用いたNC加工で用いられている。
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IPA 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター 中尾/宮原
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