「経営に役立つ会計」何のための会計?(2)~勘ピュータか会計データか
2015年7月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
ある会計事務所から聞いた話。
先日クライアントから期中の会計データが届いた。見ると、当期の利益金額は予想に反して赤字になっている。社長から今期は好調だと聞いていただけに結果を知ってショックであった。
その旨を社長に話すと、「赤字ですか?いやそんなハズはないですよ!何かの間違いですよ!」ととりつかない。こちらで再度チェックしたがとくに間違いはなし。翌月になってキャッシュが不足して初めて社長は事実を認めたとのこと。
この話は「そもそも何のための会計か?」を考えさせられる。
- 自社で会計処理をやっていながら、社長は会計データを見てすらいない。
- 会計データよりも自分の「勘ピュータ」の方を信じている。
社長は数字が苦手なためすべて経理担当にまかせればよいと思っているらしい。
そこで次のような疑問が湧いてくる。 - その会社の会計処理は、そもそも経営にとって何の役に立つのか?
たしかに、税務署に提出するために決算書を作ることは法律上の義務である。しかし、(税理士が言うのもなんであるが)それだけのためにこれだけの手間暇コストをかけて会計処理をするのは正直言ってムダである。会計事務所などに入力作業を外注すれば済むからである、その方が手間暇もコストも安くしかも正確である。 - さらにこの会社は経営計画もちゃんと作っている。(正しくは会計事務所に作らせたのだが。)
しかし、せっかく経営計画を作っても当然ながら計画倒れに終わっている。
なぜなら銀行から要求されて仕方なく作った(正しくは作らせた)に過ぎず、作った時点から自分の頭に入っていないからである。こういう経営計画も正直言って手間暇コストのムダである。
同様の話はウチの事務所にもある。
というよりいっぱいある。他の事務所でもそうらしい、ある本には実に9割以上の会社が同様とある。
しかし、中にはほんの一握りであるが例外もある。社長がきちんと会計データを把握して経営にきちんと活かしている会社が。
そして、そういう会社というのは例外なしに優良企業である。
財務的に優良なのはもちろんのこと、なぜか「ヒト・モノ」にも優れている。
商品・サービスは高い顧客満足を得ており、社員はイキイキと働いているのである。
(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。