「経営に役立つ会計」何のための会計?~期中の会計処理の目的
2015年6月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
先日、記帳代行のAさんから半年分の会計データが届いた。
見てみると中間期末仕掛品が載っていない!期首分400万円は載っているのに。
中間利益は1,000万円の赤字とのことであるが、中間仕掛品を無視したのでは適正な金額ではない!
中間仕掛品の額を確認して500万円であることが分かったので、さっそく指示を出して中間利益を△500万円(赤字)に修正させた(△1,000万円+500万円=△500万円)。
本件についてAさん本人は「たかが仕掛品くらいたいした問題ではない」との認識のようであるが、私は大問題だと思う。「そもそもなぜ期中会計処理を行うのか」に係るテーマだからである。
「たいしたことない」などと平然としていられるのは、おおかた、
(1)期中に処理をやっておけば、忙しい期末が楽になるから。
(2)毎月、記帳代行料をいただいているから。
などといったふざけた目的意識でやっているからであろう。
あるべきは、
(3)「今後の『予測』に資することにより、早めに『打ち手』を講ずるため」
のはずである。
例えば、当社は下期に売上が集中するから、
上期に500万円の赤字程度なら下期で十分に黒字化できそうだ、
でも上期の赤字が1,000万円となると下期の挽回は厳しいな、などと予測が立つ。
また下期で挽回が厳しいとなれば、次に「年度末時点での資金繰りは大丈夫か」を早いうちから検討できる。
これが「早めに打ち手を講ずる」である。
こういうことがそもそも会計を行う第一の目的なのである。経営判断に役立てるということが。
そして、税務申告や外部公表用などというのは二の次なのである。
にもかかわらず、上記の(1)や(2)のような理由で粛々と事務処理をやるだけでは、経営に役立つ情報とはならない。それどころか経営判断を歪めかねない。
上の事例では修正仕訳はたった一本である。
(借)仕掛品 500万円 (貸)(中間)期末仕掛品棚卸高 500万円
これなら当事者に目的意識さえあれば容易にできる。
「何のための会計か」を理解して会計処理を行うことの大切さがここにある。
それをしないのは、せっかく経営に有益な情報を扱っていながら活用しないわけで実にもったいないことである。
今回はAさんをさんざん悪人扱いしてきたが、何もAさんに限ったことではない。いろいろな会社を見ていると同様のことがいっぱいある。というより、ほとんどが同様であると言っても過言でない。
経営に役立たない会計データなどは、作るのも見るのもムダである。ムダはやってはならない。
そんな会計ならやらない方がマシだと思う。
(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。