「経営に役立つ会計」相続対策(5)~対策はボケてからでは遅い
2015年5月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
「遺言書は死ぬまでに書けばいい」というわけではありません。「ボケてしまってからでは遅い」です。基本的に認知症など意思能力のない人の書いた遺言書は無効です(*注)。なぜなら、(1)認知症でボケた状態ではまともな遺言書を書くのは困難なため、あるいは(2)認知症の人をそそのかして自己に都合の良い遺言書を書かせるおそれがあるからです。
ですから、本人がまだ元気でピンピンしている間に遺言書を書いてもらうこと、それが最も有効な相続対策です。
とはいっても実際問題として、まだまだ元気な人が素直に遺言書作成などに応じるでしょうか。「オレはまだピンピンしてるぞ!」などとなかなか書かないケースが多いのではないでしょうか。場合によっては「そんなにオレに死んでほしいのか、この親不孝者が!」と怒り出す人もいるでしょう。こうなっては亡くなる前から揉め事が始まってしまうことになり、先行き暗いというものです。
では、そうならないためにはどうするのがよいでしょうか。
次のような方法が考えられます。ご参考にどうぞ。
- たとえば今回の相続税改正を機に話題を投げかけてみること。
- その際、遺言書の重要性を予め整理しておくことです。遺言の重要性はこれまで4回にわたって述べてきましたが、
(1) 相続税の税務調査対策には生前準備が大きくモノを言うこと。
(2) 借金があるときには相続放棄をできるが、それには生前から準備して、相続人たちに説明しておかないと間に合わなくなること。
(3) お墓を生前から準備しておけば、節税対策になるばかりか、自分の想いに合った墓を選ぶことができること。(遺言書作成とは直接は関係ありませんが、きっかけにはなるでしょう。)
(4) 残された相続人たちだけで遺産分割協議をまとめるのはたいへん難しいこと。などを説明されると良いでしょう。 - そして、早い時期から家族会議などでみんなで話し合っておくことです。他人に任せることが一番の揉める原因です。話し合いの場をきちんと持ち、各自が主体性を持って話し合うことが極めて重要です。
- 最後に、何よりも親や兄弟姉妹や家族のことを親身になって考える愛の気持ちが大切です。
*注) 例外もあります。実際にどういう場合に無効になるかの判断については、いろいろな判例や学説が存在します。
(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。