「経営に役立つ会計」相続対策(4)~未成年の子供がいると後日モメる?
2015年4月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
相続人に未成年者がいるときは、「特別代理人」を立てることになっています。これは、単に未成年者に権利能力がないためだけでなく、本来子の味方のはずの親でもいざ相続協議になると子と利益が相反する立場になるからです。
特別代理人を立てると特別代理人が本人に代わって遺産分割協議に参加することになります。このように特別代理人の役割は重要ですから、「誰を選ぶか?」がポイントになります。
ひとことで言えば、未成年者本人のことを親身になって考えてくれる人を選ぶべきです。さもないと後にモメる原因になりかねません。実際には、被相続人の兄弟など(本人の叔父・叔母・祖父・祖母など)を選ぶケースが多いですが、親身かどうかを慎重に検討すべきです。
私の身近にも、本人よりも親の利益を重視する人が特別代理人になった結果、本人は遺産分割結果をまったく知らされず、やっと20年後に次の相続を機会に知った分割結果に納得できず、分割協議の無効を訴える裁判を起こしたケースがあります。結果的には遺産分割をやり直すことに成功しましたが、その過程で親族が大いにモメ、以降親戚付き合いはなくなりました。
特別代理人になったからには、未成年者本人に分割結果をきちんと説明すべきだと思います。分割当時は本人がまだ説明内容を理解できないなら、成人してから再度ていねいに説明すべきです。また、説明できるような分割協議をすべきです。ほんとうに本人のために親身になって協議した分割結果でなければ、後に本人にきちんと説明することはできないはずだからです。
こうやって見ますと、遺産分割というのはたいへん難しいものだということをつくづく感じます。とくに未成年の子が内容を理解できる年になって納得できるような相続を行うことは。
法律は親子間で利益相反のない遺産分割を目指し特別代理人制度を置きましたが、それだけでは決して十分ではありません。まだクリアすべき課題のうちのホンの一部にすぎません。私は、相続とは「薄氷の上を歩いて渡るようなもの」だと思います。
遺産分割協議は、ただでさえ故人との死別して悲しい時期に、そうかと言って日常の仕事が待ってくれるわけではない忙しい中で、全員が何度も顔を合わせて行うのですから大変なことです。ついつい二の次になってしまいがちです。
しかし、だからといって十分な話し合いなしに結論を出してしまうと、相続人の間にわだかまりが生まれたり、あるいは特例制度を受けられなかったなどの不平不満が起こるなど、モメる原因になり、結果として家族が仲違いになり疎遠になっていきます。「ウチに限って・・・」とは、モメる家族の決まり文句です。
モメないためには、やはり何よりも早めの備えが大切なのです。
(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。