「専務のツブヤキ」
~経産省機構改革(7/1)、骨太の方針閣議決定(6/21)、スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律、AI制度研究会~

2024年8月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 このコラムが公表されることは丁度お盆(8/15)ですが、この夏の 東京の殺人的暑さ はどうなっているんですかね。GX(グリーン・トランスフォーメーション)の必要性を日々身近に感じるとともに、万一停電にでもなれば確実に熱中症等で相当な死者が出て、大災害になることと間違いないですから、 東京電力、大丈夫かな? と心配せずにはいられません。まぁ、取り越し苦労はしたくありませんが、、、(^_^;)

 さて、今回はまず7月1日付で経産省が結構大幅な機構改革(組織再編)を行いましたので触れたいと思います。私的に注目している新設された課は以下の通りです。

① 経済安全保障を取りまとめる 貿易経済安全保障局 (新設:旧貿易経済協力局)に 経済安全保障政策課 (新設)

② イノベーション政策を担当しGXを推進する イノベーション・環境局 (新設:旧産業技術環境局)に イノベーション政策課 (新設)、 イノベーション創出新事業推進課 (新設)、GX投資を推進する 脱炭素成長型経済構造移行投資促進課 (新設)

③ 商務情報政策局に 電池産業課 (新設:情報産業課の室から課へ)、 文化創造産業課 (新設:旧コンテンツ産業課及び旧クールジャパン政策課?)

 経済産業省としては、経済安全保障、イノベーション政策、GXはとりあえず電池からという布陣の強化かと推察します。また、文化創造産業課って、なんか面白そうなことをしそうでちょっと注目したいです(^_^;)

 次に、6月21日に閣議決定されたいわゆる『 骨太の方針 』(経済財政運営と改革の基本方針2024)ですが、謳い文句は『賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現』であり、要は「 賃上げの定着と戦略的な投資による所得と生産性の向上 」ということになりますね。閣議決定の第2章の「3.投資の拡大及び革新技術の社会実装による社会課題への対応」の部分の(1) DXでは、

① DFFT(Digital Free Flow with Trust)の推進、 AIの競争力強化と安全性確保の一体的推進

次世代半導体量産等に向けた必要な法制上の措置 を検討

デジタル・ガバメント/医療・介護・こどもDX/教育DX /交通・物流DX/防災DX/観光DXの推進

など、当協会の関心事項や政策提言をした内容がしっかり盛り込まれている印象です。また、(4) 科学技術の振興・イノベーションの促進でも、フュージョンエネルギー、 量子、AI 、バイオ、マテリアル、 半導体、6G 、健康・医療等の分野における研究開発等の推進等協会の委員会・研究会でもフォローしている内容が記載されていて、今後とも注視していく必要がありそうだなと感じる次第です。さらに、同章の「7.持続的な経済成長の礎となる国際環境変化への対応」の(1) 外交・安全保障でも、サイバーセキュリティの強化、 能動的サイバー防御の実施に向けた法案の早期提出 等、先日当協会から政策提言した内容がしっかり反映されています。

 最後に、先日成立した「 スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律 」ですが、これは、スマートフォンが急速に普及し、国民生活及び経済活動の基盤となる中で、スマートフォンの利用に特に必要な「 特定ソフトウェア 」( モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン )の提供等を行う事業者が、特定少数の有力な事業者による寡占状態であるがために、当該事業者の競争制限的な行為によって、公正かつ自由な競争が妨げられていることを防ごうという法律です。具体的には、公正取引委員会は、特定ソフトウェアの提供等を行う事業者のうち、特定ソフトウェアの種類ごとに一定規模以上の事業を行う者を規制対象事業者(指定事業者)として指定し、以下の事前規制を行い、 指定事業者に対しては、規制の遵守状況に関する報告、公正取引委員会の調査権限に基づき違反を是正するための命令、課徴金納付命令(算定率20%)を課せる ことになっています。具体的な指定事業者に対する主な禁止事項と遵守事項は以下の通りです。

①(正当化事由※がある場合を除き) 他の事業者がアプリストアを提供することを妨げてはならない

正当化事由 :セキュリティ、プライバシー、青少年保護等のために必要な措置であって、他の行為によってその目的を達成することが困難である場合。また、正当化事由の運用等においては、公正取引委員会と関係行政機関が連携

②  他の課金システムを利用することを妨げてはならない

③  デフォルト設定を簡易な操作により変更できるようにする とともに、 ブラウザ等の選択画面を表示しなければならない

④  検索において 、自社のサービスを、正当な理由がないのに、 競争関係にある他社のサービスよりも優先的に取り扱ってはならない

⑤  取得したデータを競合サービスの提供のために使用してはならない

⑥  アプリ事業者が、OSにより制御される機能を自社と同等の性能で利用することを妨げてはならない

 以上ですが、当協会幹部にも想定される指定事業者に対して不満を持つ方がおられたと思いますが、果たして同法でその方の不満が少しでも解消されれば幸いですが、、、(^-^)

 最後ですが、8月2日に「 AI制度研究会 」(岡本副会長が委員)が総理官邸で開催され、私も岡本副会長の随行員として参加させていただきました。議事内容は非公開で、議事要旨のみが後日事務局(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局)から公開される予定です。ということで具体的な審議内容については触れることはできませんが、私的には議論の方向性は、 AIによるイノベーションを阻害することが無いよう、ガイドラインなどのソフトロー中心に法的規制などのハードローは最低限にするという との印象でした。それのせいか、最後に、マスコミが注視する中、岸田総理からも4点、① リスク対応とイノベーションを両立 させる、②技術とビジネスの進展は早いのでそれに対応した 柔軟性のある制度 を目指す、③ 国際的な規制との調和 を図る、④ 政府調達におけるAIの利活用 が今後の方向性として示されました。今後ともフォローしていきたいと思います。

 この暑さ、いつまで続きか分かりませんが、皆様、くれぐれもご自愛ください

 なお、次回は記念すべき「専務のツブヤキ」第100号です。何を書くかちょっと悩ましいですね!(^^)!

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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