「専務のツブヤキ」
~NexTech2024(5/22)、Japan Drone2024(6/6)、第9回AI戦略会議(5/22)~

2024年6月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 5月にAIをテーマにしたNexTech2024(@ビックサイト)を視察し、ついでに「 生成AIで叶える組織の生産性向上 」という National Labs Japanの西勝彦氏 による講演も聴講しました。 同社はサンフランシスコのAI活用ツールを提供しているスタートアップ Forbes AI50にも選出 され、日本も含め多くの会社が同社のツールを活用しています。

 生成AIが今一つ組織で普及しない理由を同氏は、AIが日常業務に組み込まれていないこと、自社の情報が社内に散逸していてAIが使えないこと、AIの使い方のサポートが乏しいことを挙げていました。また、面白いのは同社が支持される理由が京都にあるとのこと、京都での経験から 日本のユーザー本位、キメ細かい気配り(痒いところに手が届く)をモットー にして同社はAIツールを提供しているとのこと。講演を聞いて、AIの組織での活用の 最大のポイントはナレッジの共有 ということかと思いました。例えば社内の情報が、メール、データベース、ファイルなどバラバラのシステムやソフトで管理され、それぞれのシステム間でデータが共有されず、 多様な業務対応できるツールがない という点です。同社のツールはその課題を解消し、 AIを実装した同社のツールは社内外のあらゆる情報を検索して利用者が必要なアウトプットを提供 してくれるようにできていました。また、そのツールを導入するためのプロセスに必要なツールも同社が提供するとともに、当該プロセス中も同社が全面的にサポートをおこなうとのこと、ここで京都での経験が役に立っているようでした。同ツールは SanSanでは30%の作業時間の削減 大阪ガスでは情報検索時間の35%短縮 などの成果を出していました。講演会場は最後まで満席で、この会社、今後も注視していきたいなあと思った次第です。

 次に6月に Japan Drone 2024 (@幕張メッセ)に行ってきました。今年度の機械システム振興協会様の受託事業(ドローンのデータセキュリティの高度化に関する戦略策定事業)にお手伝い頂いている斎藤フェローのご案内付きです(^_^;) ドローンのハード自体は中国のDJIがかなり幅を利かしている印象 でした。ドローンというとラジコンのようなイメージでコントローラーを使って制御するイメージですが、 今はパソコンにより予めプログラムされたコースを飛行 するというものが目につきました。送電線の異常個所やプラントのアナログメータの点検などに使われています。また、暗視カメラを搭載して夜間や暗闇でも自律的に飛行可能で、万が一トラブルがあっても自力で充電ステーションまでは戻れるという安全性も強調されていました。今後は、離島や山間部だけでなく 都市部も含めた物流関係、ペイロードも20~30キロくらい(航続距離も20㎞前後)までのものが急速に普及 しそうな気がしました。ただ、人を乗せる空飛ぶ自動車については思った以上に羽が広がっておりあまりコンパクトな感じではなく、 実用化はさらなるコンパクト化も含めまだまだ先かな という印象でした。

 また、福島県が原発に代わる新産業ということでドローンの実用化に熱心な様子で、かなりのスペースをとって今回の展示会にブースを出していました。前職の東京工科大学時代に 菊池製作所(@八王子(高尾):社長が飯舘村出身)と協力して福島県からの補助金(出所は経産省)を利用してドローンの実用化に向けた実証実験(除染状況の確認)を支援 していましたので、福島県も本腰を挙げたようで感慨深いものがありました。

 最後に第9回AI戦略会議ですが、AIのリスクに応じた規制の在り方をまとめた「 「AI制度に関する考え方」について 」の概要がまとめられました。各対策や制度については、偽・誤情報対策に関して デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会(総務省) 、生成AIと知的財産に関して AI時代の知的財産権検討会(知的財産戦略推進事務局) 、生成AIと著作権に関して AIと著作権に関する考え方について(文化審議会著作権分科会法制度小委員会) でそれぞれ検討中又は取りまとめられています。

 AIを利用した偽・誤情報等の生成・拡散については、我が国においても、ネット上の違法・有害情報が問題化しており、技術的対策には、① AI生成物に電子透かし等を付加 、② コンテンツに出所や来歴等の情報を付与 、③ オンラインプラットフォーマーがAI生成物を判別しラベリング 等により受信者がAI生成物や信頼性ある情報を識別可能とする等が考えられようですが、制度的には総務省における検討の結果、 大規模プラットフォーム事業者に対して、①対応の迅速化、②運用状況の透明化を義務づける情報流通プラットフォーム対処法が2024年5月に成立 しています。さらに、総務省は2023年11月より、 デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会を開催 し、 総合的な対策を検討して今年夏頃を目途に近くとりまとめる 予定です。

 AIと知的財産権等の関係では、AI時代の知的財産権検討会が AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護が両立するエコシステムの実現に向けて、AI開発者、AI提供者、AI利用者等の関係主体に期待される取組事例についてとりまとめ ています。

 AIと著作権の関係では、上記小委員会が生成AIと著作権に関する考え方を整理し、周知するため、今年3月にAIと著作権に関する考え方について、開発・学習段階に関して、著作権法第30条の4の適用範囲を「 第30条の4(抜粋) 著作物は(中略)当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には(中略)利用することができる。ただし(中略)著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 」ととりまとめました。

 AI関係も今後政府の各部署から色々とアウトプットが出てきますので、適宜コラムで紹介していきたいと思います。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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