「専務のツブヤキ」
~AI戦略会議(6/26)、デジタルライフライン全国総合整備実現会議(6/28)~
2023年8月15日
SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
今回は6月に開催された 第3回AI戦略会議 (座長:松尾豊東大教授)及び 第1回デジタルライフライン全国総合整備実現会議 について、ツブヤキたいと思います。
その前にちょっと商務情報政策局の人事後の新体制について触れますと、 野原局長は留任 しましたが、審議官は二人とも異動し、 西村秀隆氏(半導体、AI、IPA、透明化法、JLOX) 、総務省から 牛山智弘氏(デジタルライフライン、国際関係、LOX 以外のコンテンツ) 、西川氏が異動し 総務課長は 若槻一泰氏 (10年前に商務情報政策局の政策企画委員)、奥田氏が異動し サイバーセキュリティ課長は 武尾伸隆氏 (元ITイノベ課長、蓄電池室長からの横滑り)、新しくできた 参事官(デジタル戦略担当)に 瀧島勇樹氏 (元ITイノベ課長)がそれぞれ着任し、残りの方は留任されました。見知ったお顔の方が結構いますので良かったと思います(^-^)
さて、田中会長もメンバーのAI戦略会議ですが、政府側から科学技術政策担当大臣、総務大臣、文部科学副大臣、及び経産省から長峯誠政務官他が出席しました。政府側からは、
① ガバナンスについて基本となる 総務省と経済産業省のガイドラインを生成AIの登場や普及を踏まえて見直し又は統合 して全ての役所、更には、AIの開発者、提供者、利用者にとって参照されやすい形にしていくこと
② リスクへの対処について、国民向けに、 偽情報が出た場合には速やかにこれを修正する正しい情報を発信できる体制の構 築すべきこと
③ 初等中等教育段階の生成AIの利用について、来月早々のガイドライン公表
④ AIと著作権の関係 について、 著作権法の正しい理解に基づいてAIが利活用 されるよう、今後専門家も交えてAIの開発やAI生成物の利用に当たっての論点を整理し、考え方を周知、啓発していくこと
⑤ AI開発に不可欠なインフラである計算能力を拡充 する民間企業(さくらインターネット、ソフトバンク)の取り組みに対しての支援を決定したこと などが述べられました。
その後の議論では、AIが生成したものに学習元の著作物と類似なものが出てきたときに、これを販売すると著作権侵害になるかどうかの判断や元の画像を作った人と生成AIで創作物を作った人との間で論争があることなど、 色々な著作物からAIが学習して生成された著作物(又は肖像)に対する著作権(又は肖像権)のあり方 などが議論されました。ただ、この議論、 ハリウッドでも脚本家や俳優の団体がストライキをするなどかなりセンシティブな問題 になっていますし、一筋縄ではいかない気がしますね。
また、プログラムにも著作権がありますが、将来プログラミングの作業自体はAIが担うようになり、ビジネスモデル特許のように 人間はプログラムのアイデアを考えることが主要な役割 になる気がします。そうなると私的にはプログラムのコード自体の著作権よりも プログラムのアイデアを権利化することが必要 になる気がするのですが、皆さん如何でしょうか(^_^;)
また、デジタルライフライン全国総合整備実現会議では、 自動運転やAIの社会実装を加速し、「点から線・面へ」「実証から実装へ」の方針 が検討されているのですが、以下の三つの アーリーハーベストプロジェクト(2024年度から実装) を見るとかなり進んできたという印象です。
1. ドローン航行 :埼玉県秩父エリア等の150km以上の電力線上空をドローン専用に開放
2. 自動運転車用レーン :新東名高速の駿河湾沼津-浜松等100km以上を深夜時間帯に自動運転車用のレーンとして開放
3. インフラ管理のDX :関東地方の都市(200km²)で地下の通信、電力、ガス、水道の管路に関する空間情報をデジタル化して空間ID・空間情報基盤を介して相互に共有
これらって、結構すごくありませんかね。私的には、例えば、電力線の上空はもともと人件費の削減でドローンを使った点検に利用されていたそうですが、それを物流用のドローンにも解放できるのではないかと思いついた方は勲章ものではないでしょうか、という気がしています(^_^;)
今後もAI戦略会議とデジタルライフライン、目が離せないと思います
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。