「専務のツブヤキ」
~G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合(4月29、30日)~
2023年5月15日
SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
4月29日及び30日、経済産業省は、デジタル庁、総務省と共同で、高崎市において「 G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合 」を開催しましたので、今回はそれについてツブヤキたいと思います。
本会合では、以下の6つのテーマについて議論が行われ、その成果として、「
G7デジタル・技術閣僚宣言
」が採択されました。閣僚宣言の主なポイントは以下の通りです。
①越境データ流通と信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow withTrust、DFFT)の推進
DFFTの具体化のための国際枠組み(the Institution Arrangemennt for Partnership:IAP)の設立及びDFFTの具体化のためのG7ビジョン・プライオリティに合意したことは、
プライバシー保護の観点からの個人情報の越境移動に関するEUの規制強化に対して一定の歯止めをかけることになり評価
できると思います。とにかく、
あらゆるステークホルダーが国際的に集まってルールを決める
ことになるでしょうから日本がうまくリードできることを願いたいと思います。
②安全で強靭性のあるデジタルインフラ
Beyond 5G/6G時代における
大容量・超低遅延でエネルギー効率が高く複層的で周波数効率性の高い将来ネットワーク
のビジョンを策定し、
途上国や新興国のサイバーセキュリティ能力向上を支援
するなど安全で強靭なデジタルインフラの構築に向けたG7アクションプランに合意しました。
③自由でオープンなインターネットの維持・推進
グローバルで分断がなく、信頼性があり相互運用可能なインターネットの維持・推進
に向けたG7アクションプランに合意しました。これは、独裁的な政権が言論統制のためにしばしばインターネットを遮断したりすることへの牽制です。
民主主義的価値をグローバルに広げましょう
ということかと思います。
④経済社会のイノベーションと新興技術の推進
ここは最も当協会に関係するところかと思います。特に
ソフトウエアや IoT 製品の信頼性に基づく相互運用のために既存の潜在的脆弱性を管理
すること、
ソフトウエア・コンポーネントの透明性を高める
ことなどを通して、脆弱性に適切に対応し、
良くセキュリティが確保されたアプリやソフトウエアを開発、設計、開発、そして利用することの重要性
がG7で共通認識となったことは当協会としても肝に銘じるべきかと思います。
⑤責任あるAIとAIガバナンスの推進
要は
民主主義の原則や人権に配慮しながら、途上国や新興国も含めてAI利用促進の国際的なルール(国際標準)を作る
ことです。欧米を中心に生成系AIなどに対して過激な規制論も出ていますが、
G7では穏当な方向性が打ち出されて良かった
のではないでしょうか。
⑥デジタル市場における競争政策
デジタル競争分野での既存の法律や新たな法制度の立案や執行において各国で共通して抱える課題を共有していくため、
デジタル競争サミットを今秋開催
することが合意されました。わが国でも3年前に「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」は施行されていますが、世界のデジタル市場はGAFAMに代表される大企業に席巻されていますので、当協会としても
同サミットの成果を注視
していく必要がありそうです。
また、西村大臣が出席した大臣会合では、ガバナンス(に関する)イノベーションについて、新興技術の社会実装に向けて、イノベーションに親和的なガバナンス、いわゆる アジャイルガバナンス(機動的で柔軟なガバナンス)の5原則 、すなわち、 法の支配、適正手続き、民主主義、人権尊重、イノベーションの機会の活用 について合意しましたが、私的にはこれって 明らかにロシアや中国を意識 してると思いました。当協会としても、 このアジャイルガバナンスについては今後の政策提言において留意する必要 がありそうです。
最後に、私事ですが、4月15日に弓道の東部地区(杉並、中野、新宿、文京区)大会が開催され、幸い第一部(三段以下、44名参加)において8射5中で3位入賞(7位以内)させて頂きました。弓道は引き続き好調です(^_^;)
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。