「専務のツブヤキ」
~「VUCA」の時代にどう生き残るか、デジタル全総~

2023年2月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 最近、「 VUCA 」という言葉を聞いたのですが、皆さん、ご存じでしょうか?一言でいうと「 先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態 」を意味するのですが、VUCAは次の4つの単語の頭文字をとった造語です。つまりV(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)、A(Ambiguity:曖昧性)ですが、ネットで調べればすぐに出てきます。具体的には、 コロナ禍、ウクライナ危機 を始めとして、最近公表された 欧州電池規則 等がVUCAの要因として挙げられます。

 コロナ禍では、中国の工場が止まり、それを契機に 半導体不足となり自動車の生産台数が4 年連続で減少し、工場の稼働停止や納期の長期化も発生 しました。また、欧州電池規則は、 24年7月以降、第三者の検証機関が証明した電池の「カーボンフットプリント」(CO2総排出量)を提出しないと、EU域内ではその電池やそれを搭載したEV(電気自動車)も流通できなくなる というもので、つい先日発表されたトヨタ自動車・パナソニック連合の電池会社や豊田通商が東京大学とタッグを組み、低炭素かつ低コストでリサイクルもしやすい「グリーン電池」の開発を目指すのも、この規制を意識したものと思われます。さらに、同規則では サプライチェーン上の取引履歴や原材料の詳細の提出が求められることも懸念 されます。

 デジタル業界も半導体を基盤とする産業インフラに支えられており、この「VUCA」と無縁ではいられないと思います。SAJとしても、 企業のデータ・情報(取引履歴や原材料の詳細など)に関する主権を守りながら 企業間のデータ・情報(カーボンフットプリントなど)の共有・活用により、売買取引における経営上のリスク を回避するのに役立つソフトウェアを開発・販売 できればと思わずにいられません。

 政府は我が国のデジタル化を「 デジタル全総 」と名付けて地方及び各産業の隅々まで進めようとしているように見えます。九州のTSMCによる半導体工場への巨額の補助金はその始まりです。恐らく、税金で4千億円以上出しても、仮に今後長期にわたって累積で数兆円規模?の経済波及効果と数千人の雇用が創出されれば、おそらく十分見合うだけの税収も上がるのではないでしょうか。そして、それは岸田政権が推進している賃上げにもつながるような気がします。さらに、 九州に始まり半導体だけでなく、全国にデーターセンターや蓄電池工場、量子コンピュータなどの拠点が展開 すれば、まさにデジタル版の全総(旧全国総合開発計画の略称:現在は第二次国土形成計画【2016】の最中)となるんではないかと期待する次第です。

 ただ、米国でも半導体製造・研究開発等を支援する「 The CHIPS and Science Act of 2022※ 」が2022年8月に成立し、 半導体関連のための設備投資等の支援が可能な基金など 5年間で計527億ドル(約7兆円)の資金が確保 されるとともに、 半導体製造・装置の税制優遇について投資額に対して4年間の25%の税額控除 (日本は7%程度が一般的か)が可能となりました。我が国、岸田総理も頑張っているのですが、是非バイデン大統領に負けないでほしいと願っています(^^;)

 最後に、私事ですが、今月は25日に弓道の昇段審査(まだ初段ですが、、、(^^;)です。大学時代は「段」には興味もなく、ただ的に矢を中てることだけしか考えていませんでしたが、弓道の基本的な所作(座り方、立ち方、歩き方、射法など)である体配をしっかりと身につけて、万全を期して臨みたいと思っています。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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