「専務のツブヤキ」
~デジタル田園都市国家構想に関する経済産業省の取組について~

2022年12月15日

SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 デジタル田園都市国家構想の実現に向け当協会としても、地域デジタル推進委員会やスマートシティ研究会を通じて業界団体として各種の支援をしてきておりますが、11月30日に政府において開催された第10回デジタル田園都市国家構想実現会議からの経済産業省の取組について今回はツブヤキたいと思います。

 同構想実現のためには、① 各府省庁の垣根を超えた施策間の連携 や同様の課題を抱える② 自治体の枠組みを超えた地域間の連携 が重要と考えており、具体的には、①に関し自動運転、ドローン、物流効率化などについてソフト面ではアプリ・データ・クラウド等、ハード面では情報処理・通信等、ルール面では技術仕様・制度等の デジタル社会実装基盤を関係省庁が連携し、整備する計画を策定 するとのことです。

 例えば、地域の生活基盤やコミュニティを支え、維持するために、デジタルを活用したサービス(例えば、ドローンによる生活必需品の自動配送など)提供に必要な基盤を整備することなどが考えられます。とりわけ空間移動を伴うデジタルサービスの基盤は、そもそも地域横断的にしか整備できませんので、道路などの物理インフラと制御システムを並行して整備することが不可欠です。その際、デジタル庁がIPAのデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)に委託していますが、DADCが産学官の叡智を結集し、 デジタル社会に必要なハード・ソフト・ルールの全体像を整理した見取り図(アーキテクチャ)を作成 するとともに、事業者や関係機関とシステム間連携等に係る実証を進めているところです。この見取り図に沿って官民が効率的、効果的な投資を行うことで、全国津々浦々にデジタル化の恩恵を享受できるよう、 デジタル社会実装基盤を全国に整備するための長期計画(いわゆるデジタル全総)を策定 すべきと考えています。

 また、整備計画の中には、デジタル人材の育成・確保も不可欠の要素です。「デジタル社会実装基盤」を通じて全国の各地域がデジタル化の恩恵を受けるため、地域においてその 担い手となる「デジタル人材の育成」と「企業のDX推進」を両輪で推進 する必要があります。具体的には、

デジタル人材育成プラットフォーム において、デジタル知識・能力を身につけるための実践的な学びの場を提供

国家試験(情報処理技術者試験) による、ITリテラシー・専門IT人材の知識・技能の客観的な評価

DX認定 を通じた、デジタル技術を活用した経営変革とそれを担うデジタル人材育成・確保の促進

などの取組を実施し、これにより 政府全体のデジタル人材育成目標の達成にも貢献 するとのことです。

 ②に関しては、個々の地域の課題(ニーズ)に閉じていては事業規模が小さく、持続可能なビジネスにならないでも、 地域に共通する課題(ニーズ)をデジタルの力で束ね、大きな事業とすることで広域的に解決可能 ではないかとのことです。

 具体的には、「やさいバス」【やさいバス株式会社】という例があります。これは市役所や道の駅などに設置した集配所(バス停)を介し、生産者から購入者へ「やさいバス」が野菜を届けて、地域産品の域内流通の促進とともに地域の買い物弱者問題を解決するもので、各地の事業者や地方自治体と連携して13都道府県、132市町村に事業を拡大し、受発注システムや管理システムを共有することでコストを低減しながら、持続可能なビジネスモデルを確立しています。これは一例ですが、このように 技術やノウハウを持つスタートアップ等の民間主体と課題を持つ地域のマッチングの推進が重要 ですし、そのためのマッチングを担う機能が必要ですので、当協会の活動としても何かお役に立てればと良いのにという気がしています。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、機械情報産業局鋳鍛造品課、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。

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