「専務のツブヤキ」
~外れた政局見通し(^_^;)とデジタル庁関係の政策動向、ノーベル物理学賞~
2021年10月15日
SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
昨日、衆議院が開催し、いよいよ総選挙となりました。実は、選挙は任期ギリギリの来月中下旬あたりかなと思っていたのですが、読みが外れました。先月の段階では、毎年恒例の補正予算があるだろうし、そうなると総裁選の後に組閣された新内閣の初仕事で補正予算を仕上げてから、その信を問う形で選挙に突入するのでは(ストーリーとしてキレイ)と予想していました。予想外だったのは、コロナの新規感染者が急速に減少したことでした。多分、 選挙を一月近くも遅らせて万が一第6波の中で選挙となると不利 (内閣支持率が下がる)と考えたのではないでしょうか。また、 過去を振り返ると麻生内閣、菅内閣も選挙のタイミングを見誤った(遅らせた)ことにより短命内閣 に終わりましたので、敢えて今回は選挙管理内閣とし、だから 閣僚人事も思い切って若手や女性の登用など選挙向けのイメージを相当意識した起用 が行えた気がします。その意味で今回平井前大臣がデジタル大臣を外れたのもその余波かもしれません。もし選挙が無ければと、つくづく残念に思うのは私だけでしょうか。
次に、デジタル庁の政策ですが、年末までに デジタル化の「新重点計画」を作成 することになっていますが、当面は以下の項目を注視していきたいと思っております。まずは、国民に対する行政サービスに関し、デジタル化によりコロナ関係など 各種給付金の支給を迅速化 したり、 運転免許証・在留カードとマイナンバーカードを一体化 して自治体サービスに活用すること、また、 ガバメントクラウドの整備により霞が関・地方のシステムの刷新 にも期待せざるを得ません。
我々の暮らし関係ですが、医療分野では オンライン診療の普及、PHR(Personal Health Record)の提供推進 、教育分野では、 ICT利用環境の強化やデジタルコンテンツの教育現場での活用 、防災分野では 防災関連情報のデータ連携を図るプラットフォームの整備 など重要かと思いますが、同分野では先日当協会から推薦したゲヒルン株式会社、株式会社シーピーユーの2社が経済産業大臣賞を受賞しました。
産業分野では、これまで政府において ビヨンド(beyond)5Gの研究開発に係る基金の設置 (令和3年3月)、デジタル社会形成関係法律整備法の成立( 押印・書面交付等の手続き見直し )など進めてきましたが、 データーセンターに関し国内5か所程度の拠点を整備 、デジタル庁を中心にIPAのデジタルアーキテクチャデザインセンター(DADC)と連携して 機密性の高いデータ管理やそれを担うインフラについて整備・普及 を進めていくとのことです。そして、デジタル人材育成の強化です。これは当協会としても関心が高いですが、 教育コンテンツやカリキュラムの整備、データを用いた事例研究など実践的な学びの場を提供 するデジタル人材プラットフォームを構築するための予算が来年度概算要求されていますので是非これに絡んでいけたらと考えています。
最後に、誰一人取り残さないということで、情報バリアフリー環境の実現のため障害者、高齢者等の利便の増進に資する情報通信機器・サービスの研究開発の推進及びその普及並びに彼らが身近な場所で身近な人からICT機器・サービスの利用方法を学ぶ環境作りや オンライン会議、電子商取引などを活用しようとする中小企業に専門家を派遣 する取り組みなども挙げられています。
以上のデジタル改革における私が注目している項目は年末のデジタル庁が現在検討している「新重点計画」の中でより明確に示されると思いますので、当協会としても今後注視していくつもりです。
最後にノーベル物理学賞です。二酸化炭素の増加による地球温暖化に関する物理モデルを世界で初めて発表した業績とのこと。昔、私は文部科学省(当時の科学技術庁原子力局)の留学制度で米国に1年間留学し、環境科学で修士号(Master of Science)を取得したのですが、実は修論のテーマが地球温暖化でした。原子力推進のための留学制度でしたので(^_^;)、 二酸化炭素を排出しない原発と石炭火力を比較して、原子力事故のリスクを差し引いても地球温暖化の防止による原発のメリットの方が勝る という趣旨の論文でした。その際、いくつかの原発の普及シナリオを想定し、シナリオ毎に地球の気温の上昇度合を計算して、それに伴い生じる災害の被害額を計算しましたが、地球温暖化の度合いを計算する時の式におそらく真鍋氏の功績が反映されていたのではないかと、ふと思った次第です。ということで、私が修士論文を書けたのは眞鍋淑郎氏のお陰とも言えますので、ノーベル物理学賞の受賞を心よりお慶び申し上げます。
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。