「専務のツブヤキ」
~令和4年度経産省概算要求予算とDXレポート2.1~
2021年9月15日
SAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
8月末に令和4年度経産省概算要求予算に加え、DXレポート2.1が公表されましたので、それらについて今回はツブヤキたいと思います。
前者については、本来なら商務情報政策局の予算を取り上げるべきなのかもしれませんが、私は敢えて商務・サービスGのサービス政策課の「「共創型」サービス・IT連携支援事業【5.0億円】」をまず紹介したいと思います。これは、① 中小サービス業やITベンダー等がコンソシーアムを組成 し、サービス業の現場の生産性を向上させるべく、② API連携等により複数のITツールを連携・組合せたものを導入 するとともに、導入後、③ 機能向上(UIやUXの改善を含む) を行い、④ パッケージ化・汎用化による業界内他社や他地域への当該ツールの普及を目指す ことを支援する事業です。補助対象は、コンソーシアムの運営にかかる費用、ツールの導入費用、ツールの連携・機能向上等の改修にかかる費用、事業者のIT活用の研修にかかる費用 等であり、 補助率は1/2もしくは2/3 、 補助額(予定)は100万円~最大1億円 とされています。会員企業のパッケージベンダーが既存の顧客(例えば、飲食業、小売店、バス・タクシー、流通などですが、令和3年度では製造業も含まれているようです)とコンソーシアムを組んでDX色を出せる新たなソフトウェア製品を開発することに使えるのではないかと考える次第です。
対象がサービス業で製造業が含まれていないところが限定的ですが、 会員企業のパッケージベンダーが既存の顧客(例えば、飲食業、小売店、バス・タクシー、流通など)とコンソーシアムを組んでDX色を前面に出した新たなソフトウェア製品を開発することに使える のではないかと考える次第です。例えば、仕入れ、来客予測、会計処理など全て手書きで経験と勘で経営していた飲食店、小売店、それらが集まった商店街などを想起してみてください。経営状態の「見える化」は全く出来ておらず、自分が今どんな顧客を獲得しているか把握できないとすれば、どんなITツールを導入すればいいでしょうか。レジから顧客情報を抽出してレポート化したり、店内外のカメラ映像から顧客の人数や属性、感情を画像解析で購買動向を分析・把握したり、過去の売上や来客データと天候や気温、湿度などから来客数を予測し仕入れに反映させるなどのITツールが考えられます。そして、さらにそれを汎用化してどの商店街にもカスタマイズできるようにすれば、色々なサービスにおいてDXは飛躍的に進むでしょう。つい最近も 当協会内にDX推進センター(仮)なる研究会も立ち上がる こととなり、 このような予算を活用して独自のDXを推進できないものか 、と思った次第です。
次にDXレポート2.1ですが、デジタル産業と既存産業(主に受託開発ITベンダーの様です)との対比が特に分かり易くて興味が惹かれましたので、以下の通り、紹介したいと思います。
|
デジタル産業 | 既存産業 |
---|---|---|
顧客 | 消費者・個人 | 発注者 |
チャンネル | オンライン/デジタルサービス | オフライン |
価値の源泉 | 顧客とのインターラクションとコラボレーション | 労働力 |
キーアクティビティー | 課題解決・顧客体験の向上 | 要件の実現 |
スピード | リアルタイム | バッチ |
何を提供するか | 価値 | 労働量 |
商流 | 価値を中心とした繋がり | 固定的な取引関係 |
収益の流れ | 価値の受取り手⇒創出者 | 元受け⇒下請け |
産業構造 | ネットワーク型 | ピラミッド型 |
選定基準 | ビジョン・共感 | 調達コスト・労働分配 |
参入要件 | 尖がった強み | ”何にでも対応できる” |
キーリソース | データ・知財・エコシステムパートナー | 労働力 |
コンピューティンク”基盤 | クラウド | オンプレ |
プラットフォーム | エコシステム | 囲い込み |
メソドロジ | アジャイル・内製・DevOps | 大規模WF型受託開発 |
コスト構造 | 限界費用小 | 限界費用大 |
如何だったでしょうか、かなりステレオタイプ的な対比ですが、皆さん、 実際大体は、デジタル産業と既存産業の狭間にいる のではないでしょうか?今後とも、当協会が会員企業の皆様のデジタル産業への道しるべ的な役割を果たせていけたら、、、と願う次第です(^_^;)
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(現:一般社団法人ソフトウェア協会)専務理事に就任。