「専務のツブヤキ」
~デジタル社会形成基本法案などデジタル政策の進展~

2021年3月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 デジタル庁の設置が9月1日と決まり、国も デジタル庁設置を含めたデジタル社会形成基本法案 の趣旨説明を国会で行いました。この法律は、ざっくり言えば、デジタル社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針、国、地方公共団体及び事業者の責務、デジタル庁の設置並びに重点計画の作成について定める法律です。

 特に目玉のデジタル庁については、トップに内閣総理大臣を頂き、その下に担当大臣が置かれ、500人規模の強力な官庁になるようです。権限としては、以下の通り、

個人を識別する番号 に関する総合的・基本的な政策の企画立案等

マイナンバー・マイナンバーカード・法人番号の利用 に関すること並びに 情報提供ネットワークシステムの設置及び管理

情報通信技術を利用した本人確認 に関する総合的・基本的な政策の企画立案等

商業登記電子証明(情報通信技術を利用した本人確認の観点から行うもの)、電子署名、公的個人認証(検証者に関すること)、電子委任状 に関する事務

データの標準化、外部連携機能、公的基礎情報データベース (ベース・レジストリ)に係る総合的・基本的な政策の企画

など多岐にわたっていますが、中心は マイナンバーの活用、そのデータの連携を通じて国民生活及び経済活動に密着する行政サービスを抜本的に改善 しようとする意気込みが感じられる法案です。9月1日のデジタル庁設置後すぐにデジタルの日(10月10日、11日)もできますし、今年はIT業界にとって画期的な年になるような気がします。

 また、経済産業省では、今年に入ってデジタル関連政策の検討のため「 デジタル産業の創出に向けた研究会 」が開催されております。同研究会では3つのWGが設置され、CSAJは5つの業界団体が集まったWG2に所属しており、CSAJとしての考え方をプレゼンさせて頂きました。基本的にハードウェアに比してソフトウェアの重要性がますます高まってきていること、経済産業省の提唱するデジタル産業こそCSAJの会員企業が今後目指すべき姿になりそうなこと、最後に各種の政策提言を述べさせて頂きました。同研究会ではデジタル産業として4類型、すなわち、 ①企業の変革を共に推進するパートナー、②DXに必要な技術の提供、③共通プラットフォームの提供主体、④新ビジネス・サービスの提供主体 が示されています。

 また、CSAJからは、DX推進にあたり、 データの利活用の前提となるAPI連携やデータフォーマットの標準化などのデータ連携やベンダー企業とユーザー企業とは対等なパートナー(共創関係) となるべきこと、それによって DX人材も同時に育成 されるであろうことを強調しました。また、クラウド化により、パッケージソフトのバージョン管理からアップデートが主流になり、それにより ーザーは常に最新のソフトウェア・サービスを利用 できること、物品販売から定期定額購入のサブスクモデルが主流となり、 ビジネスがモノからサービスにシフト しつつあることなどをWG2で説明させて頂きました。

 ユーザー企業はDX化を進めるためにどうするでしょうか?おそらく、まずは、ベンダー依存からの脱却を含め 経営陣の意識改革 から始まるでしょう。特に、DXは必ずしもITの問題でないということ、すなわち 業務フロー全体の見直し が必要であり、その意味で ビジネスアーキテクターの重要性も認識する必要 があるでしょう。その上で、 内製化率を高めてビジネスへの対応スピードを上げる、API連携、オープンソースソフトウェア(OSS)の活用 などを進めていくのかと思っています。CSAJもそのようなユーザー企業のDX動向に今後も注視していきたいと考えています。

 最後に、2017年にCSAJは働き方改革宣言というのを発表して、2020年までに会員企業の テレワーカー率30%を目標 としておりましたが、コロナが最大の要因ですが、先日会員に対する景気動向調査によって 目標が達成できた ことがわかりました。喜ばしいことと思います。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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