「専務のツブヤキ」
~新年のおめでたい話(令和3年度及び第3次補正予算&税制改正)~
2021年1月15日
CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
新年明けましておめでとうございます、と言いたいところですが、コロナの感染拡大が日本の医療現場を危機的な状況に陥り、ついに1都2府8県に緊急事態宣言も発令されてしまいました。医療現場の皆様の使命感の高さと日頃のご尽力に心から敬意を表する次第です。しかしながら、年末には第3次補正予算と令和3年度当初予算及び税制改正の政府案が出そろいましたし、明るい未来が必ず来ることを信じてこのコラムを書いています。
経済産業省予算を見てみますと、「 新たな⽇常」の先取りによる成⻑戦略 と題して5本の柱が立っていますが、一番目が 「デジタル改革」 となっています。少し掘り下げますと、まず デジタルを活⽤した産業の転換 として補正と当初予算を併せて 1,852億円(補︓1,356億、当︓496億) が計上されました。詳細は、① 先端半導体の製造基盤強化、ポスト5G情報通信システムの開発の推進で補正予算900億円、② 異なる事業・分野間のシステムやデータをつなぐための標準の策定や、モビリティ・バイオ分野等の事業者間でのデータ共有・共同開発を通じ、デジタル技術を活⽤した新たなイノベーションを⽣み出す企業の経営⾰新の加速に対して当初予算85億円、③ 5G等を活⽤した⽣産⼯場のスマート化、⼤容量・低遅延等を特徴とする次世代ソフトウエア技術開発で当初予算12億円 などとなっています。当協会としては、今後特に ③に着目し、予算を取りに行きたい と考えています。
次に、デジタル基盤・ルールの整備として同じく 2,418億円(補︓2,301億円、当︓117億円)が計上され、その中の大部分は、 ものづくり補助⾦、持続化補助⾦、DXを進めるためのIT導⼊サポートやIT導⼊補助⾦を通じて、コロナ時代に対応したビジネスの推進や新たなサービスモデルの開発等による⽣産性向上の促進ための予算であり、補正予算2,300億円、当初予算135億円 です。特に、補正予算(2300億円)の中小企業生産性革命推進事業は令和元年補正でも3,600億円が措置されていたものの追加であり、 これにはIT導入補助金も含まれ当協会会員企業の皆様にも相当恩恵があると思われます。
税制改正に目を向けてみますと、まずは DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制 です。これは、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を促進するため、全社レベルのDX計画に基づく クラウド技術を活用した ハード・ソフトのデジタル関連投資に対して最大5%の税額控除 等が適用されます。また、 研究開発税制も拡充されて2年間延長 されました。拡充内容としてはコロナ禍の厳しい経営状況の中(売上2%以上減)においても研究開発 投資を増加させる企業に対する 税額控除の上限引き上げ(25%→30%) が目玉ですが、当協会としてはDX促進のため クラウド提供型のソフトウェアに関する研究開発が対象に追加(※) されたことが大きいと思っています。私は、ソフトウェアの研究開発に関しては、3年越しで パッケージソフトを前提として製品リリース前までが研究開発、その後のバージョンアップは対象外という考え方はもう古い 、むしろクラウド+アップデートを前提とした税制にすべきと要望してきたわけですが、幸い前の情報技術促進課長のTさんが研究開発税制の担当課長に移られ、やっと念願が叶い感無量の思いです。私、運が良いのかも…です(^_^;)
※:https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2021/pdf/zeisei.pdfの15ページによれば以下の通り
試験研究費のうち、研究開発費として損金経理をした金額で非試験研究用資産の取得価額に含
まれるものを加える。
(注1)上記の「非試験研究用資産」とは、棚卸資産、固定資産及び繰延資産で、事業供用の時に試験研究の用に供さないものをいう。
(注2)上記に伴い、売上原価並びに取得価額に研究開発費として損金経理をした金額が含まれる非試験研究用資産の償却費、譲渡損及び除却損を研究開発税制の対象となる試験研究費から除外するとともに、取得価額に研究開発費として損金経理をした金額が含まれる非試験研究用資産について研究開発税制と特別償却等に関する制度との選択適用とする。
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。