「専務のツブヤキ」
~就職氷河期事業始動、コロナと経済活動、情報政策の5つの「変化」 ~

2020年7月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 就職氷河期というと、最近では新型コロナウィルスの感染拡大で経済が低迷しつつあるので、今年度大学を卒業する学生たちのことを想起する方も多いかもしれませんが、 ここでは35歳以上~55歳位までの方 を言っています。最初の就職氷河期は平成の初めの株式・不動産バブルがはじけた時でした。その時を経験した方は今では50代前半くらいです。その後2000年代はITバブルがはじけ、2008年にはリーマンショックがあり、今では労働人口全体の3分の1以上が非正規であり、その大半が35~55歳の就職氷河期世代と言われているそうです。

 実は、昨年春ごろ、厚生労働省(国)の方が当協会にヒアリングに来られて、IT分野で2~3か月の比較的短期の職業訓練で非正規の就職氷河期世代の方を正社員、つまり安定就労に導けることはできないかとの相談がありました。当初、国の方は、ダメで元々という気持ちで来られた様子でしたが、当協会の人材委員会の山本委員長(当時)が、まず、ソフトウェアのテストをする人材(以下「テスト人材」)は現在不足している上に、2か月あればIVECの資格を取れ、採用可能ではないか、さらに各社のシステムを保守運用している人材(以下「システム運用技術者」)も、モチベーションを上手く高めていくように工夫すれば、短期の訓練で採用する企業があると思いますと答えました。それがまさに始まりでした。

 その後は、協会事務局が事業のスキームを事務的に詰めれば 下図の通り 事業計画を固めることはそれほど難しい作業ではありませんでした。お陰様で、IVECの試験をしているIT検証産業協会と連携して、先月からようやく、 今年度から3年間で、テスト人材及びシステム運用技術者を併せて1,180名に職業訓練・就職支援を行い、安定就労に導く「就職氷河期事業(通称)」を開始 しました【下図参照】。本事業も、立案当時は、通常の集合研修による訓練を想定していましたので、この度の新型コロナウィルスの蔓延には頭を痛めています。最近、東京では200人を超す新たな感染者が出たとの報道もあり、今後の感染拡大の行方に全く気が抜けない状況です。ただ、世の中の判断基準が緊急事態宣言の時のように何が何でもコロナを封じ込めるというよりも、Withコロナの言葉通り、徐々に コロナの感染防止と経済活動の折り合いをどう付けていくか という点に移っている気がします。

 当協会でも、今後のコロナの成り行き次第ではありますが、 「会員感謝の集い」を計画 しております。大半の会員企業の入会目的は会員企業間の交流を通じたビジネスチャンスの拡大等です。その意味で、 会費を頂いている以上、たとえコロナ禍であっても、本来当協会が会員の利益のためにやるべきことは実施の方向で最大限努力する必要 があると私は考えています。もちろん、国が緊急事態宣言を出していない、東京都もステップ3の状態であるとの前提です。当然、 事前の検温、手指の消毒、マスクなどの着用の励行 など考え得るコロナ対策は行った上で実施する予定です。ただ、 どんなに対策を取っても感染リスクはゼロにはできません 。これに参加して頂けるかどうか、つまり、感染防止と経済活動の折り合いをどう付けるかという点ですが、 最終的には会員の皆様各自のご判断に委ねざるを得ない かもしれません。

 詳細はできれば次回のコラムで書くつもりですが、最後に最近の情報政策について以下の 5 つの「変化」 について触れます。

①ビジネスモデルの変化:

 膨大な デジタルデータの利活用 の必要性が高まり、サイバー中心から サイバーとフィジカルを融合 した「システム全体にビジネスの主戦場が移行」しつつあり、 巨大IT企業がリアル空間も支配 する動きから目が離せません。

②セキュリティモデルの変化:

 個別の企業・機器単体でのセキュリティ対策では限界であり、サプライチェーン全体をサイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワークでカバー しないといけないと思います。

③官民のガバナンスモデルの変化:

 データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出する必要性の高まりと既存システムのレガシー化・経営の足かせリスクを感じます【 デジタル経営改革 】。また、国内行政サービスレベルの低さが日本全体の生産性を棄損することへの危機感も感じます【 ノンストップガバメント 】。

④規制モデルの変化:デジタル技術を前提とした法規制への改革が必要【 デジタル規制改革

⑤国際ルールの変化:【 Data Free Flow with Trust(DFFT )】

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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