「専務のツブヤキ」
~新型コロナウイルスの脅威と経済への影響~

2020年3月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 2月の春節の直前に中国(特に湖北省武漢)で新型のウイルス性肺炎が大変な状況になっているとのニュースからあっという間に日本でも感染者が急増し、死者も出ているとのこと。今や、小中高の学校は4月の始業式まで休校(娘の学校も然り)、 会社も従業員全員を出勤停止にしてテレワークで対応するところ、さもなければ時差出勤、外部との打合せは全てテレビ会議で行う 等の対応となっているようです。相撲は無観客試合、プロ野球やJリーグも開幕を4月以降に遅らせました。ここまでくると、オリンピック、パラリンピックが無事迎えられるのか、本当に予断を許さない状況になってきた気がします。

 幸い、 当協会は一昨年からテレワークを導入 しており、常時2~3名がテレワークをしておりましたし、 各職員の携帯も内線化するシステムも導入済 みで、このような状況に自然と対応できる体制になっていたおかげで、今のところ事無きを得ています。具体的には、 3月2日から一部の職員を除き全面テレワークに移行 しました。3月11日の定例理事会も書面審議に切り替え、無事乗り切りました。

 日々変わるのでちょっと古いかもしれませんが、統計的な数字(3月10日現在)だけで見ますと、日本はクルーズ船を除き感染者数581人、回復者数101名、死亡者数10名です。中国を除く世界で見ると感染者数38,546名、回復者数4,305名、死亡者数1,154名と急増傾向です。日本及び中国を除く世界全体では感染者の急増の方が顕著でこれからが封じ込めの正念場のように見えます。一方、中国に関しては感染者数80,757名、回復者数60,106名、死亡者数3,136名ですが、新たな感染者数の増加は頭打ちで、一方回復者の数が急増していますので、 グラフを見る限り中国はピークを越えたように見えます 。私の数字の見方が正しければ 今後は日米欧が封じ込められるかに注視が必要 と思っています。安倍総理も3月10日に大規模イベントの自粛の10日程度の延長が発表され、この影響でディズニーランドも4月上旬まで休園となりました。また、甲子園に育った私としては、特に春の選抜高校野球が中止というのも残念でなりません。

 そうなると今後の日本経済、世界経済への影響はどうでしょうか?先月ITS基金の資産運用説明会で、私は今後の資産運用にかなり影響が出そうなので、外国株を運用しているヘッジファンドに質問しました。彼らが言うには、コロナは一時的なものと考えており、影響については評価していない(するつもりもない)と断言しました。内心は中国の交通の要所であり自動車生産基地である武漢が閉鎖され、現にサプライチェーンが寸断されているのに本当か(影響は短期)?と思っていたのですが、プロも予想を外す様ですね。先日ロシアとOPECで減産協議が決裂して以降原油価格が暴落しているため、現時点では日本を含め世界中の株価も暴落していますが、日経平均は2万円をいつ回復できるのでしょうか? 日経平均が20700円を切るとPBR(純資産倍率)が1を切りますので、現在の株価はこれはもう既に異常な株価 と言えるでしょう。一時1万7千円を割り込んだ 今日(13日)がセーリングクライマックスであることを願います (ような気もします)が、当分は今回のコロナの影響を反映した悪い経済指標が続きますし、この経済への影響は長期化すると思わざるを得ません。

 経済への影響で一番心配なのは、 需要面では消費の落ち込み、供給面ではサプライチェーンの寸断 です。消費は特に航空、鉄道等の運輸業、ホテル、旅行業、飲食業等のサービス業の落ち込みが心配されます。サプライチェーンは、今や日本中がメイドインチャイナ製品で溢れていることを考えると消費がV字回復しても供給が追い付けるかが懸念されます。一方、IT業界、ソフトウェア業界はどうでしょうか?今回の危機を教訓に各社のIT投資がどこに向かうか考えると、BCP(事業継続計画)がポジティブに見直されITインフラ(テレワーク、テレビ会議等)の重要性が再認識されたこと等を勘案すると、追い風の部分もある様な気がします。

 でも、今回の新型コロナウイルスは感染力は強いのですが、致死率はそれほど高いわけではありませんし、死亡者も高齢者や基礎疾患のある方に集中していることを勘案すると、私的にはこのウイルス、どうしても来年はただの風邪(又はインフルエンザのようなもの)という扱いになるような気もするのですが、、、いずれにしろ、 政府の財政を含む早急な経済対策及びこの感染病の一刻も早い終息を心から願う次 第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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