「専務のツブヤキ」
~顔認証ビジネス研究会とセンシングサイネージ~

2020年1月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 新年【令和2年】明けましておめでとうございます。今年は、荻原会長の年頭所感にもありますように、デジタル化が一層進み、特にデータの利活用がビジネスの新たな種となるような気がします。国も情報処理促進法を改正し、さらなるDXの推進を進めていきますし、 データを独占的に支配できるプラットフォーマに対する規制法も今通常国会に提出される見通し と聞いています。このようなことから、今年は会員各社の皆様のビジネスが、デジタル化を軸により一層飛躍できるチャンスの年ではないか、と期待する次第です。

 当協会においても、「 顔認証ビジネス研究会 」が新たに発足しました。先日、いつもの通り、地下鉄に乗り何気なく、デジタルサイネージの広告を見ていますと、「 センシングサイネージ 」という告知が出てきました。カメラのロゴとスマホのような画面から電波が出ているロゴが付いていましたが、読んでみると凡そ、これからセンシングして個人情報(顔や服装の画像などか?)を取りますが、視聴環境に合わせた最適な広告を放映するための広告コンテンツの差替えや広告効果の分析などが目的で、個人の特定にはつながらないという内容でした。その後、周りを見るとサラリーマンとOLばかりでしたから、やはりお菓子や主婦が使う洗剤などの広告ではなく、NTTドコモの広告が流れました。日経新聞のCMではありませんが、つい「なるほど」とツブヤイてしまった次第です。

 その後、センシングサイネージについて調べてみますと、昨年6月に 一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム から以下のURLに「 センシングサイネージガイドライン 」というものが公表されていて、個人情報の扱い等が示されており、地下鉄で見た事前告知の内容も同ガイドラインに沿ったものでした。

https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/センシングサイネージガイドライン第1版.pdf

 個人情報保護法も3年に一度見直されることになっており、現在その大綱がパブコメ中です。当協会も先日の神奈川県からの大量の個人情報の流出事件を受けて関心を持っていますので何らかの意見は出す予定ですが、顔認証ビジネスと個人情報保護の問題は密接に絡んできますので、同ガイドラインは「顔認証ビジネス研究会」の今後の活動に大いに役立つのではないかと思った次第です。

 これはあくまでも私の思い付きですが、このセンシングサイネージが交通機関の至る所で使われだすと、犯罪者の追跡にも使えるかなという気がしました。事件発生後に警察はよく周辺の監視カメラの映像を確認しますが、駅への出入りだけで多分電車の中までは無理だったと思います。また、センシングサイネージに防犯目的はありませんが、ある程度犯罪(特に痴漢など)の抑止力にはなるかもしれません。ただ、これもやりすぎると日本も中国並みの監視社会か、となってしまうかもしれませんが、、、

 最後に、ちょっと蛇足ですが、 新年の ドラマや映画を見ていたのですが、サイバーセキュリティやデジタル社会が強調される作品がやたらに増えてきた気がする のですが、私の気のせいでしょうか?例えば、「狙われた半沢直樹のパスワード」(1月3日放映ドラマ)、「スマホを落としただけなのに」(1月6日テレビ放映の映画)、「絶対零度」(フジ月9)です。最初の作品は、主演が娘がファンの吉沢亮でしたので見てしまったのですが、専門用語にもかかわらずパスワード等への色々な攻撃手法の名前が次々と出てきて、トロイの木馬などのウイルスが大活躍していましたし、次のの映画では「ランサムウェア」でした。どれも、一昔前に騒がれたウイルスです。オリパラも近いので、世間のサイバーセキュリティへの関心が高まっているのかなと思う次第です。最後のフジ月9のドラマは、国民全体のビッグデータを解析して今後犯罪を起こす確率が95%以上の人間をAIがピックアップして、その犯罪を未然に防ぐ(未犯)という設定です。将来のデジタル社会はこうなるかもしれないよ~というのを暗示するような作品でした。テレビなどのマスメディアがこの調子ですから、オリパラだけでなく今年はデジタル、セキュリティでも世の中騒がしくなる予感がする次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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