「専務のツブヤキ」
~新年度を迎えて(政策の動向、ADEC、認定情報処理支援機関など)~
2018年4月15日
CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎
新年度に入り、経済産業省の新政策の議論はこれからですが、キーワードは「 デジタルトランスフォーメーション 」のようです。産業界は総じてこれまで短期的な観点でのシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守・運用費が高騰する「 技術的負債 」となり、戦略的なIT投資に資金・人材が振り向けられなくなってきているとのこと。現状では、既存の産業界のIT関連費用は、過去の遺産の機能追加が中心で、 何とその80%は現行システムの維持管理(ラン・ザ・ビジネス)に使われている とのことです。
このようなことから、役所の問題意識としては、ユーザー企業はシステムの更新の失敗リスクへの懸念等から「技術的負債」の解消を躊躇する傾向にある一方で、IT企業は現行システムの保守・回収に人材や資金を振り向けざるを得ない状況(守りのIT投資)ではないかと考え、このままでは 産業競争力強化の観点からのデジタルトランスフォーメーションの競争に立ち遅れてしまわないかと危惧 している次第です。私的には、システムの技術的負債は、業務の停止やデータ流出・毀損等を引き起こすリスクに発展する可能性もあり、社会的な悪影響も無視できないかなという気がしています。
以上のような状況を打破して日本企業(ユーザー企業+IT企業)の人的・資本的リソースを攻めのIT投資にシフトすべく経済産業省内で 4月下旬から研究会を立ち上げて具体的な施策(準備金、保険、ADR等)の検討 をしていくようです。 場合によっては新法 もあるかもしれません。そうなると、攻めのIT投資にはそれ相応の人材も不可欠であり、 CSAJでは創造プロジェクトでまさに攻めのIT投資に不可欠な人材育成のためのカリキュラムを開発 していますのでそのニーズが益々高まると期待されるとともに、 バックオフィス生産性WGの政策提言をこの新政策の動きにどう絡めていくか 、その辺が重要かなと考えている次第です。。
また、工業標準化法が産業標準化法に改正され、従来の工業製品だけでなくデータやサービスもJISマークの対象になるとのこと。CSAJではPSQ認証がありますが、場合によっては PSQ認証の取得=JISマークという可能性 も出てきました。今後とも動向をフォローしていきたいと思います。
次に、CSAJに目を向けますと、今年度最重点事項はデータ適正消去証明書発行事業の立ち上げです。2月末にデータ適正消去実行証明協議会(ADEC)が設立されました。最近、 某者がリサイクル市場に出回っているPCを無作為に50台購入し調べたところ、なんと15台が市販のデータ復旧ソフトでデータを復元できた とのこと。そのうち、2台はデータ復旧ソフトを使わなくても中身が閲覧できた(つまり未消去)とのこと、かなり背筋が寒くなる話だと思いました。つい先日ADECの下でデータ消去ソフトの認証判定が行われ、企業向けの消去プロセスの認証基準の策定も最終段階に差し掛かっており、4月下旬からは某家電量販店で証明書を発行する実証試験もいよいよ開始します。 正式な 事業開始は5月末を予定 しておりますので、会員の皆様にも近くご案内し、是非ご活用いただければと思っている次第です。
また、3月末に中小企業庁の主催する「スマートSME研究会」に出席しましたが、今国会で中小企業等経営強化法が改正されて 一定の要件を満たしたITベンダーが「認定情報処理⽀援機関」の認定 を受けられるようになります。もともとはIT導入補助金の運用改善の一環で導入されることになった制度ですが、昨年の平成29年度補正予算には間に合いませんので、同認定を受けたITベンダーのITツールが同補助金を受けやすくなるのは、(あくまでも仮定ですが)平成30年度補正予算からとなるでしょう。認定機関になると中⼩企業の導⼊及び⽣産性 向上の実績を始め、セキュリティ対策、ソフトウェアツールベンダーの第三者認証の取得状況等について情報開示義務が課せられますが、セキュリティ対策のところでは、( CSAJの)SOFTWARE ISACへの参加の有無 、第三者認証の取得状況の有無のところでは PSQ認証が例示 として挙げられていますので、それらを満足していれば補助金審査の際に加点されて採択されやすくなる可能性が高くなります。
最後に、年度も変わりCSAJも装いを新たにしました。 事務スペースを3Fから4Fに移転 し、Pマーク室を含め一か所にまとめるとともに、3Fの会員企業向けコワーキングスペース(サテオ)も殺風景な事務机・椅子からラウンジ風に改装しました。サテオはCSAJでの会議、打合せやセミナーの前後の時間を有効に活用して頂けるようで、評判も上々のようです。また、 新卒の遠藤君も4月から入協し、CSAJは派遣の方も含め13名体制 となりました。
筆者略歴
笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)
1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。