「専務のツブヤキ」
~政策提言の活発化とスタートアップ事業のDemo Dayを終えて~

2017年12月15日

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 さて、今回は今年に入ってから政策委員会の下に、続々WGができて、その活動が活発化しておりますので、それらの活動についてつぶやきたいと思います。

 まず、6月に税制改正WGができました。もともと、2月のセキュリティ月間中にIPAが開催したIPAのセキュリティフォーラムの挨拶の中で世耕経済産業大臣がセキュリティ投資を活発化させるインセンティブを考えているとの発言から始まりました。元役人の私が聞けば、インセンティブといえば優遇税制しかないというのはすぐわかりました。当時、「こんな大事なことここで言っちゃうんだ」と私は思いました。それでCSAJの平成29年度重点活動項目の第1が「ソフトウェア開発等を促進する新税制の創設」とした次第です。その後、年度が変わってから案の定、経済産業省がセキュリティを絡めたIT投資促進税制(Connected Industries税制)を検討し始めたことから、ユーザーニーズをしっかり税制に反映させたいということで、経済産業省からCSAJに協力要請があり、税制改正WGを設置することになりました。WGでは、特にクラウドの導入促進が議論となりましたが、 クラウドの導入経費は費用 であり、資産性のある投資にはならないということで、財務省的には極めてハードルの高い 費用の税額控除の要求を経済産業省にお願い することになりました。費用というのはすでに利益を計算する際に差っ引かれた部分、即ち既に課税を免除されている部分ですので財務省の抵抗が強いのは当然です。最終的に財務省の反対を押しのけることができるかどうかはわかりませんが、それでもとにかく 経済産業省から財務省に要求されたこと自体が画期的 なことと私は思います。いずれにしろ、12月末までにデータ連携・高度利活用を行い、新たな付加価値を創出する取組について、 一定のセキュリティ要件を満たしたものについて、「機械装置(IoT機器)」「器具備品」「(データ連携等に必要な)ソフトウェア」に対する投資やサービスの利用を促すための税制措置(平成32 年度末まで3年間) が講じられることになると期待しています。

 次に、7月に設置されたFinTechWGです。これは昨年の銀行法の改正で全ての金融機関が2年以内にAPIをオープンにすることが決まったことに始まります。一般的にFinTech企業は金融機関に対して弱い立場にある上に、金融機関ごとに異なるAPI利用の契約書を結ぶことになると交渉だけで大変な労力になります。そのため、CSAJでは同WGが窓口となりFinTech協会と連携して9月に API契約書のひな型を公表 しました。ただ、これを金融機関が受け入れてくれなければひな型の意味がありません。そこで11月から 全銀協が主催する「オープンAPI推進研究会」にFinTechWGからメンバーを出して、CSAJ側の意見が反映されるよう活動 しています。来年の3月までには、参照系及び振込・決済を伴う更新系の契約書のひな型について金融機関と合意できればと期待している次第です。これにより、金融機関とのオープンAPIが促進されれば、我が国の決済システムにとって画期的な転機になるような気がしています。

 また、11月には中小企業IT活用支援WGが活動を始めました。これはJCSSA、販売店協会と合同のWGとなります。12月8日に平成29年度補正予算が閣議決定され、中小企業向けに IT導入補助金(補助率1/2)は500億円(市場規模は1000億円)が計上 されました。昨年の100億円から一挙に5倍増です。ただ、今後は単なるバラマキとの誹りを受けないよう、本当に各中小企業ユーザーの生産性が向上するようなIT導入が図られるよう、しっかりと運用改善に取り組む必要あります。中小企業庁からその一環で ITツール・ベンダーの見える化 について協力を求められており、同WGで対応することにしています。これにより、中小企業ユーザー向けのIT市場が格段に拡大するのではと期待しているところです。

 最後になりますが、12月7日、CSAJスタートアップ支援事業のフィナーレとも言えるDemo Dayが盛況のうちに終わりホッとしています。2016年までに出資企業の好事例としてtripla㈱及び2017年に出資した6社にプレゼンして頂きましたが、どれも好評で、その後の個別相談ができる懇親会でも各社ともVCと活発な出資相談が行われました。特に tripla㈱ はその後の増資も順調で体制強化もしっかり進んでおりますので、2,3年の内にはひょっとしてIPOも視野に入ってくるのではと期待 しています。今年はIoT、AI、ビッグデータなど第4次産業革命を担う事業を中心に投資を進めましたが、 来年はさらにデータ連携・利活用分野の事業をぜひ取り込みたい と考えています。また、年々プレゼン企業のレベルも上がっているような気がしており、今後がますます楽しみになってきた次第です。

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。

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