「愛と繁栄を実現する経営改革」経営指標の設定にご注意!

2017年10月1日

CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明

 経営計画の立案作業のなかで、目標とする経営指標の設定は極めて重要である。社員はその指標に向かって努力するからである。もし設定を誤れば会社も誤った方向へと向かってしまう。だから細心の注意を要する。

事例1)
 A社は、収益性を高めようとして”売上利益率10%”を目標に掲げた。
しかし結果は、売上高が減少し、利益も減少した。
 理由は、売上利益率10%を割る商談を断ったためだ。
商談にあたった社員は売上利益率さえ達成すれば褒められるのだから、彼には売上利益率を押し下げるような商談は断ろうとするインセンティブが発生したのだ。
断っておくが、決してこの社員が悪い訳ではない。彼は指示された目標に忠実であっただけだ。問題なのは目標設計をした人である。さらに誤解の無いよう付け加えると、”売上利益率”目標が常に間違いだと言うのではない。”売上利益率”さえ達成すればよいとする、いわば目的と手段の本末転倒がダメなのだ。

事例2)
 B社は、結果の売上高だけで評価するのは好ましくないと考え、過程となる指標も評価基準にしようとした。
過程となる指標を何にするか検討した結果、見積書の提出件数とした。
しかし結果は、売上が減少し、利益は大幅に減少した。
 理由は、営業マンが相手先の言いなりになってどんどん値引の見積書を出したからだ。
その結果、値引した分の売上が減少し、利益も同額分減少した。
営業マンは見積書を多く出しさえすれば褒められるのだから、彼には値引見積書を提出しようとするインセンティブが発生したのだ。

 事例にあげた経営指標はいずれももっともらしいものだ。会計事務所など実務を知らないところは、ちょっと頭で考えただけでこのような経営指標を押し付けてくる。しかし、「偉い先生がおっしゃるのだから」と鵜呑みにすると大変なことになる。私はこれまでに悲惨な結末をいやというほど見てきた。
 では、彼らから身を守るにはどうすれば良いか?それは、生え抜きの役員(社員)の「違和感」を活用することだ。
実務経験が豊富な彼らなら、「見積書の件数を増やしさえすればよい」などと聞けば直ちに違和感を覚えるはずだ。
彼らは実際に何度もあれこれ失敗して学習してきている。これは単なる「勘」ではけっしてない。失敗したのには失敗したなりの理論がある。彼らのカラダに沁み込んだ理論こそが、実務で通用するものなのだ!


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(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

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