「愛と繁栄を実現する経営改革」計画した利益で十分
2017年9月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
経営計画で立てた利益では足りないケースが多い。計画した本人は十分なつもりでも実は足りない。
一つはキャッシュベースに引き直したチェックをしないためで、もう一つはリスクまでも考慮しないためだ。
今回は前者のキャッシュベースについて述べることにする。ここでキャッシュとは、現金および預金をいう。
実務をやっていて痛感するのは、利益からキャッシュに至る「道のりは長い」ということだ。多くの場合、利益が黒字でもキャッシュが赤字などと、利益よりもキャッシュの方が少なく、両社の間にはマイナスのギャップがある。
その道のりとは具体的には、税引前利益から、税金を納め、借入金を返済し、さらに配当を支払った後に残るものがキャッシュだということだ。
この税金なり借入返済などの負担がズシンと重いので道のりが長くなるのだ。
そもそも経営にとって大事なのは、利益よりもキャッシュの方である。利益は外部に公表するための道具としては優れているが、利益という物は実在しない、だから利益ではモノを買えない。しかし、キャッシュは実在するし、モノも買える。また、いささかオーバーだが、利益がどれだけ赤字になろうとも借入などの手段でキャッシュが繋がりさえすれば会社は存続できるが、キャッシュが底をついたら会社は立ち行かなくなるからだ。
もう一つ道のりを長くしている要因に、売上計上から回収までのタイムラグがある。売り上げた時点で利益はあがるがキャッシュは回収するまで増えないので、このタイムラグは道のりを長くする方向に働く。とはいえ他方に、費用計上と支払の間のタイムラグも存在し、こちらは逆の方向に働く。両タイムラグの影響は相殺されるが、売上回収までの期間の方が費用支払までの期間より長いか、売上金額の方が費用金額より多い(すなわち黒字の)ときは、道のりを長くする方が優勢になる。
道のりの話とは関係ないが類似したものに、売上回収と費用支払とのタイムラグもある。ふつうは売上回収の方が費用支払よりも時間的に後になる。このことにより、注意すべきは、売上が急増するとキャッシュはかえって減ってしまうということである。これは実務家は体験から知っているが、意外に会計事務所は知らず誤った指導をしている。このキャッシュ不足は売上を回収すれば解消していくので、資金繰り管理さえきちんとしておけば心配する必要はない。資金繰り管理によりキャッシュ不足が見込まれたら、得意先が発行した注文書を銀行に見せて借入をすることである。これで回収までの短期資金繰りをつなぐのだ、これが本来の「運転資金」である。ここでの対策を誤ったばかりに会社が破たんするほどもったいないことはない。
一方で道のりを短くする要因に、減価償却がある。キャッシュは固定資産を買い取った時に一括して減るが、利益は減価償却を行うことにより使用期間に応じて減っていく。だから減価償却を行うと、翌年からはキャッシュは不変だが利益は減るという上述してきたのとは逆方向のギャップが生じ、道のりは逆に短くなる。すなわち、減価償却をすれば利益よりもキャッシュが増えるわけだ。
ここから「減価償却をするとキャッシュは増える」と言う人がいる。一見もっともらしいがどうだろうか?答えはNOだ。減価償却をしたからといって現金預金の金額が1,000万円から1,200万円に増えるわけではない、「打ち出の小槌」ではないのだ。あくまで利益は減るがキャッシュは不変なので、相対的にはキャッシュの方が多く見えるだけである。
話を戻すと、経営計画は、利益の金額を出して終わりというのではなく、キャッシュ残高も出して再検討することが肝要である。経営に大切なのはキャッシュだからだ。
私はいつも、会計事務所の作る経営計画ではダメで、実務に長けた経営者が作るものでなければならないと言っている。数字(カネ)だけではダメで戦略が分からないとダメだと。
しかし、戦略だけでもダメだ、上述したような問題もあるので数字(カネ)も分からないといけない。
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(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。