「愛と繁栄を実現する経営改革」何を売るか~商品構成と経営資源配分のミスマッチ~
2016年12月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
業績不振の原因は往々にして商品構成と経営資源(ヒト・モノ・カネ)配分のミスマッチにある。
今後は衰退していく「今日の商品」ばかりにヒト・モノ・カネを投入し、将来性ある「明日の商品」に投入しないなどがそれである。
もう時効なので書くが、新卒でインテックに入社した1年目に通信事業部門に配属になった。当時は中小企業VAN(付加価値通信網)の解禁直後でインテックが第一号に名乗りを上げた時期で、通信事業は同社の将来を左右する重要事業であった。
にもかかわらず、それに携わる社員数は極めて少数であった。全社員2000人のうち同事業に携わったのは20人程度にすぎず、われわれ新入社員300人のうちではたった3人であった。
これはおかしいと思い、その年の忘年会で部長に不満をぶつけた。「会社の将来を左右するほどの重要事業に新入社員をたった3人しか貼り付けないとはいったいどういう了見ですか」と。これに対して部長は「社員を1人貼り付けると年間1000万円もの機会費用が発生する。まだ通信事業はスタートしたばかりで何人も貼り付けるだけの余裕がないんだ」との返事であった。私としては合点がいかなかったが、まさか数字で来られるとは思わず、忸怩たる思いをしたことを鮮明に覚えている。
しかし今になってみれば、以下のように部長の誤りを指摘できる。
経営者は、会社の今日だけを見るのではなく将来までを見通して判断すべきであるから、今後衰退していく「今日の商品」に投入していたヒト・モノ・カネは減らしていって、その分を「明日の商品」に振り向けるべきであると。
この事例は、今日の商品に力を入れるケースだったが、昨日の商品にばかり力を入れるケースも多い。また別のパターンとして、今日の商品同士もある。「今日の主力商品」と思っていたものが実は「ダメ商品」だったケースである。
W社は、もともと「個人向け」が強く「今日の主力商品」である一方で「法人向け」は弱かった。しかしある時から、社長の誤った願望により「法人向け」に走ってしまった。結果は即赤字転落である。「法人向け」は「社長の誤った願望によるダメ商品」であるため直ちに撤退すべきにもかかわらず、いっこうに撤退しようとしない。さんざん苦労した末、最後は数字で示してやっと社長を説得した。私も「捨てること」の難しさを改めて思い知らされたものである。
以上、2つの事例を紹介したが、誤りを回避するポイントは「全体を見る」ことである。インテックの部長は、「明日の商品(通信事業)」だけの採算を考えたが、全体を見て将来性ある通信事業に力を入れるべきである。(もっとも、全体を見通した判断は社長の役割だが。) そうすれば会社は、今日も明日も安泰でいられる。(なお、インテックの名誉のために付け加えると、同社はまもなく昨日の商品から通信事業に多くのヒトをシフトさせた結果、通信事業は大きく発展した。)またW社の社長は、自分の願望にしがみ付くことなく、全体を見通して収益性の高い個人向けに専念すべきである。
具体的な回避策としては、各商品の傾向を分析し収益性・将来性を把握したうえで、全社的な見地から経営資源を適切に振り分けることである。この商品特性分析さえきちんとできれば、経営資源の配分を誤るはずがない。
そうすればミスマッチは回避できる。
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(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。