「愛と繁栄を実現する経営改革」誤解を正す経営計画
2016年11月1日
CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明
経営計画を作らない社長さんは、よく以下の誤解をされる。
- 「商品・サービスさえ良ければ」売れるハズだ。
- 「大マーケット」に進出すれば売れるハズだ。
- 「何でも屋」になれば経営が安定するハズだ。
私の説得力の弱さもあるものの、社長さんたちはみなさん頑固でなかなか誤解を認めてくださらない。
そういう方には実際に手を動かして経営計画(具体的な計画)を作っていただく。すると、論より証拠である。作ってみれば、誤解が自然に分かってくる。これも経営計画の効用である。
経営計画は会社の「戦略」である。戦略を立てるポイントは、(1)お客様の要求、(2)自社の強み、(3)ライバルの弱みの3つである。3つの重なるポジションに経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間)を集中させる。こうして限られた経営資源を最大限有効活用させるのである。
ただし戦略は社内で頭をひねってみても出てこない。3つともお客様に聞くべきものだからだ。だから経営計画はお客様回りをしなければ決して作れない!
お客様回りをしているうちに、これまで自分だけが「良い商品・サービス」と思い込んでいたものが、実はお客様の要求から離れたものだったことに気付く。このことは我が国の多くの製品が「ガラパゴス」と称され敬遠されている事実からもお分かりいただけよう。
また、「大マーケット」には強力なライバルがたくさんいて無闇には勝てないことも明らかになる。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」との楽観的な予測に反して、こちらが撃つ前に集中砲火を浴びて玉砕するのが関の山だということが。お客様を回っているうちにライバルの情報も入手でき、自社との戦力差が見えてくるからだ。
さらに、「何でも屋」であるが、計画を考えるうちに、現有の経営資源のままではムリなことが分かる。ヒトが足りないカネが足りないなどである。そもそも「何でも屋」というのは往々にして「何もない屋」である。経営資源を分散させてしまうためどの商品もライバルに勝てないのだ。中には、「売れるものなら何でも売ってこい!何が売れるかは自分で考えろ!」式の会社も見受けられるが、戦後の物不足の時代ならいざ知らず今日の飽和時代にはこんなやり方は通用しまい。
まとめると、経営資源は有限だから効率的に活用しなければならない。そのためには上記(1)~(3)が重なる自社ポジションをしっかりと見据えた「戦略」を明確にすべきで、闇雲に「大マーケット」や「何でも屋」に進出してもダメだということである。
それでも、行く行くは「全国区・グローバル」や「総合○○業」になりたいとの気持ちは分かる。また、現行のマーケット・事業だけでは永久に安泰という訳ではないため、新マーケット・新事業進出は大切なことではある。だからといって、一朝一夕に「全国区・グローバル」や「総合○○業」になるのはムリである。なる方法としては、一つ一つ市場を勝ち取っていくしかない。市場細分化して、攻める優先順位を決めて経営資源を集中投入する。こうしてまず第一順位のところを勝ち取る。勝ち取ったら第二順位のところを攻める。これを繰り返して一つ一つ勝ち取って行く。多くの市場で安定多数なシェアを占めるに至って(すなわち「強者」になって)はじめて、「全国区・グローバル」や「総合○○業」が許されるのである。ただしいったん強者になっても、「総合○○業」を維持するのは至難の業である。昨今の松下、ソニー、日立等の「選択と集中」と称した「捨てる戦略」に見られるとおりである。
とはいえ、強者を目指すのならばなおさら、そこに至るまでの経営計画すなわち「ヒト・モノ・カネをいつ・どこに・どれだけ投入するか」を決めることが不可欠である。
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(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。