「愛と繁栄を実現する経営改革」失敗するパターン3:経済取引の本質の誤解

2016年2月1日

CSAJ 監事 公認会計士・税理士・ITコーディネータ 山田隆明

 しばしば「商売は駆け引きだ」、「売る側が儲ければ買う側は損する」などと聞きます。
しかし損な買い物と分かっている取引をする人がいるでしょうか。ここに経済取引の本質に対する誤解があります。
 経済取引はゼロサムゲームとは違います。ゼロサムゲームとは、マージャンのように誰かがプラスになれば他の人が同額だけマイナスになるものです。経済取引では売り手も買い手も両者ともプラスになります。ともに利益になるからこそ取引が成立するのです。
数値例をあげます。売り手が原価80万円の車の売価を100万円に設定するケースを考えます。
買い手はこの車に100万円以上の価値があると判断すれば購入します。逆に100万円未満と判断すれば購入しません。
例えば車がなくて日常生活すら満足に送れず困っている人なら「そこそこの車」でも価値ありと判断するでしょう。仮に130万円の価値ありと判断すれば、100万円の車なら購入します。それでも彼は30万円の利益を得ますし、売り手も20万円の利益を得ます。
このように両者とも利益になる時にだけ取引は成立し、一方でも損失なら成立しません。取引が成立するということは両者とも利益になるということで、経済取引はお互いをハッピーにするものなのです。
 ではさらに突っ込んで、売り手が顧客の望んでいる車(例えば「静かな車」)を勧めたら両者の利益はどうなるでしょうか。
買い手はさらに価値が高まるので(例えば200万円に)、ワンランク上の静かな車(例えば売値150万円(原価が100万円)の車)でも喜んで購入するでしょう。そのとき顧客の利益は当初の30万円から50万円に増え、売り手の利益も20万円から50万円に増えます。すなわち、買い手が望むものなら、買い手だけでなく売り手の利益も増えるのです。
 この売り手の利益の増加は、顧客のニーズをしっかり把握して解決策を提案したことの結果です。ですから営業にはお客様の利益を追求する姿勢が大切です。相手が利益を得た結果、自分の利益として戻ってくるのです。営業とは、駆け引きなどの「相手と反対の方向」を向くことではなく、相手を思いやり「相手と同じ方向」を向くことなのです。
 今日、企業の社会貢献のあり方がよく議論されます。企業はいかにして社会に貢献すべきかとの問いに対して、「税金を納めること」「文化やスポーツ活動を行うこと」などと答える経営者が見受けられます。しかし、そういうことよりも、お客様のニーズに合う商品を提供することこそが真の社会貢献です。そのお客様が利益を得るからです。そして利益を得るお客様の数をどんどん増やしていくことが、広く社会に貢献することになるのです。

(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ

山田 隆明Twitter

1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業 。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田経営会計事務所開業、現在に至る。
---税務だけでなく、経営判断のための会計、人をヤル気にする会計を。
2009年9月から一般社団法人コンピュータソフトウェア協会監事。

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